一献(読み)イッコン

デジタル大辞泉 「一献」の意味・読み・例文・類語

いっ‐こん【一献】

1杯の酒。また、酒を酌んで飲むこと。「一献傾ける」
酒の振る舞い。酒盛り
「或夜―の有りけるに」〈太平記・五〉
一度目の酒肴しゅこう
「―にうちあはび、二献にえび、三献にかいもちひにてやみぬ」〈徒然・二一六〉
室町時代以後の酒宴礼法で、吸い物さかなぜんに杯・銚子ちょうしを添えて客に出し、酒を3杯すすめること。→こん
[類語]一杯

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精選版 日本国語大辞典 「一献」の意味・読み・例文・類語

いっ‐こん【一献】

〘名〙 (「献」は酒杯をすすめる意)
① 小規模な酒盛り。また、酒をふるまうこと。小酒宴。一酌(いっしゃく)
※東寺百合文書‐は・年不詳(鎌倉)一一月二六日・僧厳書状「可一献之由沙汰入候」
※太平記(14C後)五「或夜一献(コン)の有りけるに」
② 二献、三献と、段々に酒をすすめる時の一度目の酒肴のこと。
※雲図抄(1115‐18頃)裏書「次使已下下着座〈略〉一献」
徒然草(1331頃)二一六「一献にうちあはび、二献にえび、三献にかいもちひにてやみぬ」
③ 室町時代以後の酒宴の礼法で、吸い物や肴(さかな)を杯に添えて出し、三杯すすめること。
※長祿二年以来申次記(1509)「一献と申入て退出候へば〈略〉仍三献参候に、二献めの時」
※東寺百合文書‐ち・永享六年(1434)四月二三日・二一口方評定引付「守護不入御判一献分、廿貫文地下可懸、但、遵行已後可仰下云々」

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世界大百科事典(旧版)内の一献の言及

【酒】より

…宮廷での神事や節供には酒宴が催され,大きな盃(さかずき)に満たされた酒が一座の全員にまわされた。一巡するとこれが一献(いつこん)であり,三献が普通であった。料理の品目を献立というのも,この酒宴からきている。…

※「一献」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」