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光の異常屈折のために,一点の漁火(いさりび)でも左右に細長くのびて見える現象。九州の八代海(別名不知火海)や有明海で夏の朔日(さくじつ)(旧暦の1日で大潮になる日),特に八朔(旧暦8月1日)によく見られる。この現象は《日本書紀》景行紀にも記され,古くから知られていたが,その正体が不明のまま不知火といいならわされてきた。1937年宮西通可(1892-1962)が現地の観測と室内実験で,不知火現象のおこる機構を説明した。すなわち,所々に澪(みお)(水路)のある遠浅の海で,夜に潮が大きく引いて,干潟と澪が現れている時には,干潟の砂の上の空気は冷たく,澪の上の空気は暖かく温度差が大きくなる。ここに風が吹いていると,たくさん並んだ空気の柱状渦の列ができる。柱状渦の先方に漁火があり,柱状渦の軸方向の手前からその漁火を見ると,柱状渦はレンズの働きをして,一点の漁火でも横に広がった光の列となり,空気の動きに応じて揺れて見えるというのである。
執筆者:畠山 久尚
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…《日本書紀》には,景行天皇の船が,夜暗くして着岸が困難であったとき,遥かに火の光を見て無事陸に着くことができたので,その地八代県(あがた)豊村を火の国と名づけたという地名由来伝承をのせる。また《肥前国風土記》には,肥君らの祖,健緒組が土蜘蛛(つちぐも)を討ったとき,不知火(しらぬい)が天から降ったため,火の国としたという伝承をのせている。これらから,肥君の本拠,肥後国八代郡肥伊郷付近より起こって肥(火)の国の名がつけられたものであろう(八木田政名《新撰事蹟通考》)。…
※「不知火」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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