織ったり編んだりしないでつくる,いわゆる織らない布。短い繊維を紡いで糸をつくり,これから織るか編んで布にする作業は大きな労力を要するので,それを避けて繊維から直接に布をつくる方法が次のようにくふうされた。すなわち(1)フェルトからつくる,(2)フィルムからつくる,(3)繊維を結合させてフェルト様にして不織布にする,(4)ゴムやプラスチック支持物上にフェルト様シートをつくって不織布を製造する,(5)加熱軟化させた繊維を溶着させて不織布とする,(6)繊維を適当な溶媒で結合させて不織布をつくる,などである。
不織布製造は二つの部分から成り,一つは繊維のウェブ(格子状に絡み合ったもの)をつくること,もう一つは結合である。1kgの繊維からは普通の衣服地を10~12mつくれるが,これは約2億本の繊維を含んでいる。したがって繊維をウェブにするほうが,結合させることより難しい。ウェブには繊維を配向させるかランダムに配列させるかの2通りがある。繊維を配向させるのは普通の織物をつくる方法と同じで,梳(す)いて繊維を平行に並べる。平行に並んだウェブは横方向に弱いので,これを補うため交差配置ウェブもつくられる。これは一つのウェブを望ましくは直角近くで他のウェブの上に置くのであるが,平行配置ウェブに比べて製造速度が非常に遅くなる。ランダムウェブは,ランド・フィーダーRando-feederとランド・ウェバーRando-webber(いずれもアメリカのカーレーターCurlator社の商品名)と呼ばれる供給装置とウェブをつくる装置を組み合わせた特殊な機械でつくられる。繊維を吹き飛ばしてスクリーン上で捕捉し,集めたランダムウェブを圧し整える。ウェブの形になった繊維は互いに結合した状態となる。接着剤のポリ酢酸ビニル,ゴムラテックス,尿素-ホルムアルデヒド,ポリ塩化ビニル分散液および水溶性カルボキシメチルセルロースなどが,結合剤として用いられる。以上で述べた方法のほか,熱可塑性繊維を他の繊維とブレンドして,溶媒や熱で溶かして繊維の接着を行う方法も使われる。不織布は弾力に富み,復元性が大きい。
用途は衣服用芯地が最も多く,使い捨てベッドシート,枕ケース,タオル,長期使用の毛布,アイロンマット,カーペット,ナプキン,靴の内張り,室内装飾品と広がっている。
執筆者:瓜生 敏之
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
天然繊維あるいは人造繊維のステープル,フィラメントが,接着剤,溶融繊維あるいは機械的方法で接合された布状体をいい,製織,編成,縮重によらないものである.不織布の製造方法は,原理的には繊維シートをつくる工程と,必要に応じてこれを接合する工程からなる.繊維シートをつくる方法に乾式法と湿式法とがある.乾式法は水を用いず,紡績用カードあるいはガーネットなどの装置により繊維シート(ウェッブとよぶ)を形成する.通常,ウェッブに方向性をもたせないよう,繊維をランダムにする考慮がされ,ランダムウエバーといわれる形式のものが用いられる.ウェッブを接合するには接着剤によるもの(合成樹脂溶液やエマルションを用いる方法,樹脂粉末を用いる方法,繊維を接着剤として用いる方法)と機械的接合法(ニードルパンチ法,ステッチ法)とがある.湿式法は水あるいは接合剤を含有した液中に原料繊維を分散させ,抄紙機を利用してシート状にするものである.そのほか,既成の繊維を用いずに繊維形成と同時に不織布をつくる直接法がある.おもなものにスプレーファイバー法,スパンボンド法がある.前者は原料高分子を溶液,融液状にして紡糸ノズルにより噴射させ,ノズル周囲からの空気流で吹きとばし,分断し,繊維をつくり,きわめて細い繊維からなるランダムマットにする.後者は紡糸金口から押し出されたフィラメントをジェットで延伸し,フィラメントを摩擦帯電や与えた静電気によりバラバラにして,ループを描かせて,堆積し,ウェッブを形成する.芯地,フィルター,断熱防音,フェルト,ナプキン,シーツ,つや出し布,使い捨て布など多くの用途に利用される.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
繊維を織布工程を経ることなしに、平行または不定方向に配列させ、合成樹脂接着剤で結合し、フェルト状にした被服材料。原料はアメリカでは安価なレーヨンや木綿が多く、合成繊維は少ないが、日本では芯地(しんじ)などの用途が多いので、ポリエステル、ナイロンなどの合成繊維が使われる。加工の方法には浸漬(しんせき)式と乾式とがある。浸漬式は抄紙(しょうし)式ともいい、繊維を合成樹脂接着剤の槽に通して含浸し、乾燥・熱処理したもので、紙によく似た感じとなる。乾式は、繊維を薄い綿状にしたものに合成樹脂を吹き付けて加熱乾燥したものである。1950年ごろからアメリカで急速に発展を遂げ、繊維が絡んでいるため、縦横の方向性がなく、裁ち目もほつれないので、種々の用途に向けられているが、日本では芯地を主体にしたものから、最近では工業用としても広く使われつつある。
[角山幸洋]
『白樫侃他著『不織布』(1965・日刊工業新聞社)』
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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