不織布(読み)フショクフ(英語表記)non-woven fabric
bonded fiber fabric

デジタル大辞泉 「不織布」の意味・読み・例文・類語

ふしょく‐ふ【不織布】

織らない布。繊維を合成樹脂その他の接着剤で接合して布状にしたもの。弾力に富み、通気性にすぐれ、洋服の芯地などに用いる。

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精選版 日本国語大辞典 「不織布」の意味・読み・例文・類語

ふしょく‐ふ【不織布】

  1. 〘 名詞 〙 織ってない布。繊維を薄綿状に排列し、繊維自体のもつ融着力によって、あるいは接着剤を用いて、繊維相互を接合して得られる布をいう。弾力に富み、通気性にすぐれる。芯地、裏地、壁材、雑布や、医療用に用いる。〔流通革命(1962)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「不織布」の意味・わかりやすい解説

不織布 (ふしょくふ)
non-woven fabric
bonded fiber fabric

織ったり編んだりしないでつくる,いわゆる織らない布。短い繊維を紡いで糸をつくり,これから織るか編んで布にする作業は大きな労力を要するので,それを避けて繊維から直接に布をつくる方法が次のようにくふうされた。すなわち(1)フェルトからつくる,(2)フィルムからつくる,(3)繊維を結合させてフェルト様にして不織布にする,(4)ゴムやプラスチック支持物上にフェルト様シートをつくって不織布を製造する,(5)加熱軟化させた繊維を溶着させて不織布とする,(6)繊維を適当な溶媒で結合させて不織布をつくる,などである。

 不織布製造は二つの部分から成り,一つは繊維のウェブ(格子状に絡み合ったもの)をつくること,もう一つは結合である。1kgの繊維からは普通の衣服地を10~12mつくれるが,これは約2億本の繊維を含んでいる。したがって繊維をウェブにするほうが,結合させることより難しい。ウェブには繊維を配向させるかランダムに配列させるかの2通りがある。繊維を配向させるのは普通の織物をつくる方法と同じで,梳(す)いて繊維を平行に並べる。平行に並んだウェブは横方向に弱いので,これを補うため交差配置ウェブもつくられる。これは一つのウェブを望ましくは直角近くで他のウェブの上に置くのであるが,平行配置ウェブに比べて製造速度が非常に遅くなる。ランダムウェブは,ランド・フィーダーRando-feederとランド・ウェバーRando-webber(いずれもアメリカのカーレーターCurlator社の商品名)と呼ばれる供給装置とウェブをつくる装置を組み合わせた特殊な機械でつくられる。繊維を吹き飛ばしてスクリーン上で捕捉し,集めたランダムウェブを圧し整える。ウェブの形になった繊維は互いに結合した状態となる。接着剤のポリ酢酸ビニル,ゴムラテックス,尿素-ホルムアルデヒド,ポリ塩化ビニル分散液および水溶性カルボキシメチルセルロースなどが,結合剤として用いられる。以上で述べた方法のほか,熱可塑性繊維を他の繊維とブレンドして,溶媒や熱で溶かして繊維の接着を行う方法も使われる。不織布は弾力に富み,復元性が大きい。

 用途は衣服用芯地が最も多く,使い捨てベッドシート,枕ケース,タオル,長期使用の毛布,アイロンマット,カーペット,ナプキン,靴の内張り,室内装飾品と広がっている。
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化学辞典 第2版 「不織布」の解説

不織布
フショクフ
nonwoven fabric, non-woven

天然繊維あるいは人造繊維ステープルフィラメントが,接着剤,溶融繊維あるいは機械的方法で接合された布状体をいい,製織,編成,縮重によらないものである.不織布の製造方法は,原理的には繊維シートをつくる工程と,必要に応じてこれを接合する工程からなる.繊維シートをつくる方法に乾式法と湿式法とがある.乾式法は水を用いず,紡績用カードあるいはガーネットなどの装置により繊維シート(ウェッブとよぶ)を形成する.通常,ウェッブに方向性をもたせないよう,繊維をランダムにする考慮がされ,ランダムウエバーといわれる形式のものが用いられる.ウェッブを接合するには接着剤によるもの(合成樹脂溶液エマルションを用いる方法,樹脂粉末を用いる方法,繊維を接着剤として用いる方法)と機械的接合法(ニードルパンチ法,ステッチ法)とがある.湿式法は水あるいは接合剤を含有した液中に原料繊維を分散させ,抄紙機を利用してシート状にするものである.そのほか,既成の繊維を用いずに繊維形成と同時に不織布をつくる直接法がある.おもなものにスプレーファイバー法,スパンボンド法がある.前者は原料高分子を溶液,融液状にして紡糸ノズルにより噴射させ,ノズル周囲からの空気流で吹きとばし,分断し,繊維をつくり,きわめて細い繊維からなるランダムマットにする.後者は紡糸金口から押し出されたフィラメントをジェットで延伸し,フィラメントを摩擦帯電や与えた静電気によりバラバラにして,ループを描かせて,堆積し,ウェッブを形成する.芯地,フィルター,断熱防音,フェルト,ナプキン,シーツ,つや出し布,使い捨て布など多くの用途に利用される.

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「不織布」の意味・わかりやすい解説

不織布
ふしょくふ
non-woven fabric

繊維を織布工程を経ることなしに、平行または不定方向に配列させ、合成樹脂接着剤で結合し、フェルト状にした被服材料。原料はアメリカでは安価なレーヨンや木綿が多く、合成繊維は少ないが、日本では芯地(しんじ)などの用途が多いので、ポリエステル、ナイロンなどの合成繊維が使われる。加工の方法には浸漬(しんせき)式と乾式とがある。浸漬式は抄紙(しょうし)式ともいい、繊維を合成樹脂接着剤の槽に通して含浸し、乾燥・熱処理したもので、紙によく似た感じとなる。乾式は、繊維を薄い綿状にしたものに合成樹脂を吹き付けて加熱乾燥したものである。1950年ごろからアメリカで急速に発展を遂げ、繊維が絡んでいるため、縦横の方向性がなく、裁ち目もほつれないので、種々の用途に向けられているが、日本では芯地を主体にしたものから、最近では工業用としても広く使われつつある。

[角山幸洋]

『白樫侃他著『不織布』(1965・日刊工業新聞社)』

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百科事典マイペディア 「不織布」の意味・わかりやすい解説

不織布【ふしょくふ】

ノンウーブン・ファブリックとも。繊維を適当な方法でウェブ(薄綿)状またはマット状に配列させ,接着剤あるいは繊維自身の融着力により接合して作ったシート状のもの。使用繊維は綿,レーヨン,アセテート,ナイロン,ポリエステルなどで,目的に応じて単独または混合して用いる。繊維を配列させる方法に,梳綿(そめん)機でウェブを作り,これを積み重ねる乾式と,抄紙方式による湿式がある。現在実施されているのはおもに乾式で,製品の強度も湿式にまさる。使用繊維や接着剤の種類で製品の性質は異なるが,一般に防縮性,防皺(ぼうしゅう)性,耐水性がすぐれ,軽くて通気性がよい。用途は濾布(ろふ),洋服の芯地(しんじ),レザーの基布,シーツ,カーテン,おむつなど。
→関連項目化学繊維紙

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「不織布」の意味・わかりやすい解説

不織布
ふしょくふ

繊維を織ったり,編んだりしないで,適当な方法で,ウェブ状 (薄綿状) またはマット状に配列し,接着剤や熱処理によって,繊維相互を接合させて,シート状にしたもの。古来フェルトに代表されるが,綿,レーヨン,アセテート,ナイロン,ポリエステルなどを,用途によって,単独または混合して用いる。一般に,合成繊維と合成ラテックスを主体としたものが多い。布目がないので弾力に富み,ほつれず,皺にならず,通気性,防縮性にすぐれ,方向性もないなどの特性をもつ。衣料芯地,裏地,靴底,ろ過布,ナプキン,カーテン,ビニルレザーや擬革の基布,壁材,電気や熱の絶縁材など,広く用いられる。

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栄養・生化学辞典 「不織布」の解説

不織布

 紡績工程をせずに,繊維から直接作られる布.

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