翻訳|value added
企業あるいは産業が一定期間の生産活動により新たに付加した価値をいう。大まかには以下の関係である。
生産額=純付加価値+原材料費(中間生産物)+減価償却費
企業・産業の一定期間の生産額すべてを付加価値とみなすことはできない。なぜなら、生産額のなかには原材料としてこの企業・産業が他の企業・産業から購入した中間生産物が含まれているからである。中間生産物は他の企業・産業の生産物であり、この企業・産業の生産活動により新たにつくりだされたものではない。したがって、企業・産業の付加価値を計算するには、これらの中間生産物の価値を控除する必要がある。生産額と売上高は一般には異なり、その差額は製品在庫の増減となる。企業・産業の一定期間の売上高から生産過程で使用された中間生産物である原材料費を控除することにより粗付加価値が得られる。粗付加価値は今期の生産活動により新たにつくりだされた価値であるが、企業・産業がこの生産活動を行うことにより、既存の資本設備には減耗が生じている。この減価償却費を控除することにより純付加価値が得られる。純付加価値には、金利、広告費、運賃など第三次産業の所得となる営業諸経費が含まれている。これらの第三次産業の提供するサービスも、生産活動への投入であるとして、粗付加価値から減価償却費とともに営業諸経費も控除して純付加価値とすることもある。付加価値計算を行うことにより、生産過程において使用された中間生産物の価値の重複計算が避けられる。
付加価値を全企業・全産業について集計することにより生産国民所得が得られる。減価償却費を含んだ粗付加価値を集計することにより国民総生産(GNP)が得られ、純付加価値を集計することにより国民純生産(NNP)が得られる。国民総生産は、2000年に導入された国民経済計算の、国民総所得(GNI)に相当する。ここには生産重視から所得重視への動きがみられる。また、付加価値を全企業・全産業について集計した価値は、最終生産物の価値にも等しい。売上高に対する付加価値の比率は付加価値率あるいは所得率とよばれる。
付加価値は、企業・産業が今期の生産活動により新たにつくりだした価値であり、賃金、配当、社内留保などの源泉となり、分配国民所得を形成する。企業・産業の従業員1人当りの付加価値生産額は付加価値生産性とよばれる。企業規模によって付加価値生産性が異なることは種々の規模別格差をもたらしている。賃金支払額の付加価値に対する割合は労働分配率とよばれる。人件費率は付加価値率に労働分配率を乗じたもので、売上高に占める賃金の割合を表している。
[鈴木博夫]
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…ここで,粗産出の〈粗〉は,中間投入の差引きを行っていないという意味で使われる。本源的投入に対する支払が付加価値であって,(同じ主体の)処分勘定の貸方に移されて,要素所得の支払の資金源泉となる。処分勘定は,この付加価値の処分活動にスポットを当てている。…
…
[剰余価値,〈不払労働の搾取〉――第3編]
生産過程でつくられる生産物の価値は,機械設備や原料など生産手段の価値の償却・回収部分,労働力の購入に当てられた資本価値の回収部分,プラス剰余価値部分から成っている。生産手段の価値は新製品に移転されたものとして償却・回収されるが,労働者に賃金として支払われた資本価値は,生産過程の外部で消費されたあと,新しくつくりだされた付加価値から回収される。日々の生産過程でつくりだされる付加価値は,この賃金の回収部分と剰余価値から成っている。…
…また,古典派経済学は,基本的には労働価値説にたちながら,資本家と労働者の間の関係を労働の売買(労働力の売買ではなく)としてしまったために,利潤の根拠が剰余価値にあり,剰余労働の搾取にあるとするには至らなかった,と。
[剰余価値概念につきまとう論争点]
なお,剰余価値という概念は国民所得論にいう付加価値に近いといわれる。たしかに付加価値から賃金を差し引いた部分が剰余価値に対応するといえなくもないが,その源泉がどこにあるかという観点からすれば,両概念はまったく相いれない。…
…投入に対する付加価値の比率である。付加価値とは企業がその経営活動を通じて新しく生産した価値であり,換言すれば,企業が一定期間に生産した価値からその生産のために他から受け入れて消費した中間生産物の価値を差し引いたものである。…
※「付加価値」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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