翻訳|annexation
国際法上,これまで自国に属していない領域を,国家が一方的行為によって自国の領域とすること。他国の領土の全部または一部,あるいは,これまで自国の保護下にあった国の領土の全部または一部に対してなされる。領土の全部が併合されるとき,当然にその国は消滅し,領土は併合した国の領土(または植民地)となる。国民はこれまでの国籍を失い,併合国の国籍を取得する。被併合国の条約上の権利義務については,併合される土地そのものに付着する負担は継承されるが,それ以外は併合により消滅するというのが通説である。
併合は,征服のように,戦争の戦勝国が敗戦国に対してなす場合が多いが,最近では平時においても見られる。それは,保護国(保護国・被保護国)の場合のようにこれまで実質的に自国の支配下にあった領域を,自国の植民地とするか(1914年のイギリスによるキプロス島の併合がその例),自国領土に併合する場合(1910年の日韓併合がその例)である。日韓併合のときには,日韓併合条約が結ばれているが,日本は1905年以来韓国を保護下に置いていたのであり,このとき,合意によってではなく,日本による一方的な併合行為がなされたと見るべきである。
征服conquestとは,国家が実力を行使して他国の領土の(通例は)全部を併合することである。したがって,征服された国は消滅する。36年のイタリアによるエチオピア征服がその例である。征服が法的に成立するためには,まず,実力によるその国の全領域の支配が完全に確立することが必要である。たとえ全領域を支配したとしても,同盟国がなお戦争を継続しているときは,単なる軍事占領であり征服としての効果は生じない。次に,征服する国によって併合する意思が公式に表明されなければならない。第2次大戦後,日本とドイツは無条件降伏し全国土を占領されたが,連合国側が併合の意思を否認したので,征服は成立しなかった。
国際連合憲章の下では,戦争を含めて武力行使が一般に否定されているので,今日では,征服を領域取得の法的根拠として認めることはできない。
→割譲
執筆者:尾崎 重義
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
国際法上認められる領域取得の方式の一つで、ある国が他の国との合意によって、領域の全部を譲り受けることをいう。割譲と異なるところは、譲渡国の領域の一部でなく、全部を取得することである。併合により、併合される国は国家としての存在を失って消滅する。この点で征服と同じであるから、併合と征服とをあわせて広義の併合として理解するむきもあるが、征服が実力を用いて一方的に行われるのに対し、併合は合意によるものである点で区別される。しかし、征服は国際法上、国際関係における武力行使禁止の原則の成立に伴い、もはや今日では認められない。併合も、昔から合意に基づくとされながら、実は強制によるものであった例が少なくない。1969年の「条約法に関するウィーン条約」で、武力による威嚇および武力の行使に基づく条約の締結は条約の無効原因とされたので、今後は、併合条約が成立しても、見せかけの合意か真の合意かが、あとで問われなければならない。
[太寿堂鼎・広部和也]
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
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※「併合」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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