保護主義(読み)ホゴシュギ

デジタル大辞泉 「保護主義」の意味・読み・例文・類語

ほご‐しゅぎ【保護主義】

保護貿易立場に立ち、それを推進しようとする思想保護貿易主義

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共同通信ニュース用語解説 「保護主義」の解説

保護主義

関税引き上げや輸入規制貿易を制限し、自国産業の振興を優先する考え方。第2次世界大戦の原因の一つとして、主要国が保護主義に走り、世界経済が停滞に陥ったことが指摘されている。以降、国際社会自由貿易を推進。世界貿易機関(WTO)を中心とする多国間枠組みを重視してきた。20カ国・地域(G20)も保護主義への対抗姿勢を鮮明にしてきたが「米国第一主義」を掲げるトランプ米政権の誕生で結束が揺らいでいる。

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精選版 日本国語大辞典 「保護主義」の意味・読み・例文・類語

ほご‐しゅぎ【保護主義】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 保護貿易の実現を主張する思想。また、その運動。→保護貿易。〔哲学字彙(1881)〕
    1. [初出の実例]「滔々たる世俗の流輩が重金説、保護主義、専売主義等に心酔したるも固より宜なりと云ふ可し」(出典:将来之日本(1886)〈徳富蘇峰〉五)
  3. 刑法上、犯人の国籍・犯罪地のいかんを問わず、自国または自国民の利益を侵すすべての犯罪には自国の刑法を適用すべしとする主義。

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知恵蔵 「保護主義」の解説

保護主義

外国との貿易で、自国の産業の保護や国際収支の改善などを目的に、自由貿易に反対し、関税や輸入制限などの保護貿易政策を取ろうとすること。また、その政策を推進する考え方で、保護貿易主義ともいう。保護貿易は、16~18世紀、英仏など絶対王政(主権国王が持ち、権力が国王に集中する政治形態)を敷く欧州の国々が取った重商主義政策(輸出助成や輸入の制限により国内産業の保護、育成などを目指す政策)が、最初の形態といわれている。第2次世界大戦後は、先進国を中心に自由貿易政策が支持を集め、開発途上国が保護主義的な政策を取ることが多かった。しかし、2016年6月、英国が国民投票によって加盟国間での人や物、サービスの自由な移動を目指す欧州連合(EU)からの離脱を決め、17年1月には米大統領に保護主義を唱える実業家、ドナルド・トランプが就任するなど、近年、先進国でも保護主義に傾く動きが出てきている。
保護主義の代表的な政策としては、(1)関税をかける、関税を高くする(2)輸入数量の制限(3)輸出国の補助金を受けた輸入品などに、割増関税や付加税をかける(4)輸出の際に補助金を交付(5)国内産業に影響を与える産品の輸出国に対し、自主規制を求める(6)為替を管理する、などがある。
一般的に、保護主義政策は、国内の生産者を海外との競合から守ることで、自国の産業を育成する、雇用の減少を防ぐなどのメリットがあるとされている。しかし、高関税による輸入品の価格上昇は、国内物価の高騰を招き、消費者に打撃となるほか、保護された国内産業が競争力を失い、長期的にみて弱体化するなど、デメリットが多いと指摘する経済学者もいる。
また、世界恐慌が起こった1929年から1930年代にかけて、各国が不況から脱するために高関税や為替の切り下げなどの保護主義政策を取り、世界の貿易量が縮小した。これらの反省から、各国は第2次世界大戦後の48年、国家間の自由貿易を推進するための国際協定「貿易と関税に関する一般協定(GATT)」を発効した。95年には、サービスや知的財産権なども含めた自由貿易のルールを決める国際機関「世界貿易機関(WTO)」が設立された。WTOには、2016年12月現在、164カ国・地域が加盟している。

(南 文枝 ライター/2017年)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「保護主義」の意味・わかりやすい解説

保護主義
ほごしゅぎ

保護貿易」のページをご覧ください。

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世界大百科事典(旧版)内の保護主義の言及

【リスト】より

…彼の言動はビュルテンベルク議会に進出するやますます急進性を帯び,そのため保守勢力の強い反発を招いて25年には国外亡命を余儀なくされた。亡命先のアメリカで著した《アメリカ経済学概要》(1827)は,持論の保護主義を初めて体系的に論じたものである。本書によって名声を得,事業面でも成功を収めたものの,故国への思いは断ちがたく,32年にアメリカ領事としてドイツに戻った。…

【国際刑法】より

…将来国際刑事裁判所が創設されれば,そこで適用される実体法・手続法は国際刑事法の基本的な内容となる。 刑法の場所的適用範囲に関しては,属地主義,属人主義,保護主義,世界主義の四つの原理がある。(1)属地主義は,犯罪が自国の領域内(国内)で行われた場合には,なんぴとを問わず自国の刑法を適用する,という原理で,国家の領域主権に基づく。…

※「保護主義」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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