法人や組合が事業を営むために必要な資金として、金銭その他の財産、労務、信用を出捐(しゅつえん)すること。各種の会社、匿名(とくめい)組合、民法上の組合、協同組合などについて、法律上この用語が使われているが、株式会社における株式(自己資本)の払込みも出資にほかならない。出資には、金銭その他の財産による財産出資のほか、労務出資と信用出資がある。労務出資と信用出資は、無限責任社員が存在する合名会社・合資会社では認められると解されている。しかし、有限責任社員しか存在しない株式会社・合同会社においては、出資財産は客観的評価可能なものに限定すべきであるか否かにより、労務出資・信用出資の許否につき議論の余地がある。出資義務は、社員や組合員という資格に随伴するものであるから、出資は社員や組合員としての当然の義務である。なお、出資の履行が社員資格取得の要件となっている場合もある。たとえば、株式の払込み、現物出資の給付など、出資の履行に関する一連の手続を経なければ設立登記ができず、会社が成立しないから、株主資格の取得ということはないからである。
財産出資はかならずしも金銭による出資に限られるものではなく、金銭以外の財産をもってする出資(現物出資)も認められる。しかし、これを無制限に認めると、現物出資された財産を過大評価して過当な株式を付与し、資本の充実を害するおそれがあるので、株式会社については設立に際し現物出資をなしうる者を発起人に限るとともに、変態設立事項として厳格な規制を加えている(会社法28条、33条)。
[戸田修三・福原紀彦]
事業を営むために必要な有形・無形の手段をその事業主体に出捐すること。事業主体としては,法律上各種の会社,匿名組合,民法上の組合,各種の共同組合,公庫,公社その他特別法上の法人等がある。出資の種類としては,財産出資(金銭出資と金銭以外の財産の出資--株式会社,有限会社ではこれをとくに現物出資という。商法168条1項5号等,有限会社法7条2号等--とがある),労務出資,信用出資がある。民法上の組合員,合名会社の社員,合資会社の無限責任社員については,財産出資のほか,労務出資,信用出資が認められる(民法667条2項,商法89条,63条5号後段,147条)が,合資会社の有限責任社員,株主,有限会社の社員,匿名組合員,協同組合の組合員等については,財産出資しか認められない(商法150条,168条1項5号,177条,542条,中小企業等協同組合法10条等)。この中で金銭出資が最も一般的であり,株式会社の株式の払込みもこれに相当する。なお,このような出資はそれぞれの事業主体を現実に成立させ,かつ機能させるために必要不可欠のものであると考えられるので,その事業主体の構成員である社員,株主,組合員等は,その構成員たる資格として当然にこれらの出資義務を負うものであるとされる。
執筆者:岸田 雅雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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