犯罪として刑罰を受けるべき刑法上の責任。責任につき、道義的責任(道徳的・倫理的責任)、政治的責任、法律的責任とが対比されることがあるが、刑事責任は法律的責任の一種である。法律的責任のなかで、違法行為に対する法的制裁を内容とする責任として、刑事責任のほか、民事責任や行政法上の責任があるが、このうち、刑事責任はもっとも強力な制裁である。したがって、刑事責任は、違法行為のうち、民事上や行政法上の制裁では有効に対処しえない場合の最後の手段として位置づけられる。この意味で、刑事責任は他の制裁との関連で第二次的・補充的な性格をもつものとされる。ところが、今日のわが国では、「刑罰法規の氾濫(はんらん)」などとよばれるように、行政刑法の領域では、行政取締りの必要から刑事責任が安易に利用されているのが現状である。
ところで、刑事責任を問うためには、実体法上も、手続法上も、いくつかの要件を厳格に満たすことが要求される。実体法上は、犯罪は「構成要件に該当する違法かつ有責な行為」でなければならないと一般に解されており、さらに、刑事責任を問うためには、「適正な手続」に従って、刑事裁判所より、前記の犯罪成立要件を満たす行為が現に存在するものと判断されなければならない。
[名和鐵郎]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
… 〈法は道徳の最低限〉という表現があるとおり,法とくに刑法の規定する罪,たとえば殺人,窃盗,誘拐,詐欺などは,人が犯してはならない道徳的規則の最も基本的なものである。そこで,人々の主観によって恣意的な内容を与えられがちな道徳責任の概念を,刑事責任の事実をとおして,客観的に明らかにすることができる。刑事責任とは,刑罰を科せられるに値する能力ないし資格を指す。…
※「刑事責任」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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