一般に、その時々の行為を引き起こす機縁となるものが動機とよばれる。日常の習慣的な行為では、動機がはっきり意識されていないこともあるが、ABいずれを選ぶべきかといった行為の選択に際しては動機が意識され、場合によってはその動機の善悪についての反省が行為の選択を左右する。
倫理学のうえで動機説とよばれるのは、行為の倫理的善悪は動機の倫理的善悪によって定まるとする見方で、道徳法則に対する尊敬を動機とした行為のみが倫理的に善(よ)いとするカントの見方は、その代表といえる。なお動機説に対立するのが結果説で、行為の倫理的善悪はその行為の結果の善悪によって定まるとする見方(たとえば功利主義)であり、動機説がどちらかといえば心情の善さを強調するのに対し、結果説は行為の結果に責任をもつことを強調する。ここに心情倫理と責任倫理の対立がみられるが、しかし心情倫理に属するとされるカントの倫理学も、行為の結果をまったく無視しているわけではない。
[宇都宮芳明]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
…動機,動因と訳される。〈動きを与えるもの〉を意味する中世ラテン語motivumに由来する語で,まずは物体の運動に,ついで人間行動の動機(動機づけ)に,ひいては芸術用語として比喩的に用いられる。…
※「動機」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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