デジタル大辞泉
「原子力基本法」の意味・読み・例文・類語
げんしりょく‐きほんほう〔‐キホンハフ〕【原子力基本法】
日本の原子力平和利用に関する基本方針を定めた法律。昭和31年(1956)施行。
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げんしりょく‐きほんほう‥キホンハフ【原子力基本法】
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知恵蔵
「原子力基本法」の解説
原子力基本法
原子力基本法は日本の原子力開発利用の基本方針を定めるものとして、また原子力に関する諸施策の根拠法として扱われ、「原子力の憲法」という見方をされてきた。この原子力基本法が、2012年6月27日に公布された「原子力規制委員会設置法」の附則によって、部分的に改正される。このうち、原子力の安全の確保について「我が国の安全保障に資することを目的」とする項が追加され、様々な臆測と論議を呼んだ。湯川秀樹らが創設した「世界平和アピール七人委員会」は「実質的な軍事利用に道を開く可能性を否定できない」「国益を損ない、禍根を残す」と改正案の撤回を求め、報道各社も様々な角度から疑義を呈している。
原子力基本法は、原子力の研究、開発と利用について定めるものとして、1955年12月に制定。原子力の研究、開発及び利用を推進することによって、将来におけるエネルギー資源を確保し、学術の進歩と産業の振興とを図り、もって人類社会の福祉と国民生活の水準向上とに寄与することが目的。根幹には54年に日本学術会議が掲げた原子力平和利用三原則である「公開・民主・自主」を取り入れている。原子力基本法に基づいて、原子力利用の目的や基本方針のほか、原子力委員会及び原子力安全委員会、原子力の開発機関、原子力に関する鉱物の開発取得、核燃料物質の管理、原子炉の管理、放射線による障害の防止、補償などの事柄が根拠付けられる。2011年の福島第一原子力発電所事故を巡り、原子力における縦割り行政を排するものとして、経済産業省の原子力安全・保安院や内閣府の原子力安全委員会などの統合・改編が課題となった。政府・民主党は、環境省の外局として「原子力規制庁」を新設することを提唱。野党自民党、公明党は、対案として「原子力規制委員会」の設置を求めた。12年6月の3党協議を経て、「原子力規制委員会設置法」が国会で可決。この結果、後者の案に沿って、内閣から一定の独立性をもつ行政委員会として「原子力規制委員会」の発足が決まり、その事務局である「原子力規制庁」が設置される。これに伴う諸法の改正で、新設される「原子力規制委員会」などの語句について原子力基本法を改めるばかりでなく、原子力の基本方針である平和利用を謳う条文に、原子力の安全の確保について「安全保障に資することを目的」とするなどの文言が追加された。福島第一原子力発電所の極めて重大な事故にかこつけて、意図的な条文を盛り込むことへの懸念や、3党だけの修正協議だけで国会審議も尽くさず短時間で一気に成立させるという過程などへの批判が相次いでいる。
原子力基本法
日本の原子力政策の基本方針を示した法律。原子力開発に取り組み始めた1955年に制定された。原子力の研究・開発・利用を推進することで将来にわたるエネルギー資源を確保するとともに、学術の進歩、産業の振興に寄与することが狙い。平和利用に徹することを明確にするため、「民主」「自主」「公開」の三原則を掲げた。「民主」は、政府が独占せず、国民の意思に基づいて民主的に政策決定すること。「自主」は、外国から強制されたり、軍事技術が入り込む余地をつくらないよう自主的な運営をすること。「公開」は、成果を公開して疑惑を招くような秘密はつくらず、国際貢献を果たすこと。78年、原子力基本法などの一部改正法が施行され、旧原子力委員会の役割のうち安全規制にかかわる機能が分離独立し、総理府(現・内閣府)に新設された原子力安全委員会が担当することになった。
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原子力基本法 (げんしりょくきほんほう)
日本の原子力の研究,開発,利用の基本方針を宣明した法律。1955年12月公布。第2条に基本方針が次のとおり規定されている。〈原子力の研究,開発及び利用は,平和の目的に限り,安全の確保を旨として,民主的な運営の下に,自主的にこれを行うものとし,その成果を公開し,進んで国際協力に資するものとする〉。いわゆる原子力三原則を明記したもので,これは諸外国の原子力法には見られぬ大きな特徴である。以下,原子力研究・開発・利用に関する行政の民主的な運営を図るため総理府に原子力委員会および原子力安全委員会を設置すること,原子力開発機関として,政府の監督の下に,日本原子力研究所および動力炉・核燃料開発事業団を置くこと,さらに,核燃料物質および原子炉の管理,放射線による障害の防止措置などについての大綱が定められている。原子力基本法は,いわば原子力研究・開発・利用を進めるに当たっての憲法ともいうべき基礎法であり,同法に規定のある事項についての詳細は,別に法律で定めるところによるものとされている。このため,原子力基本法の規定を踏まえて,〈原子力委員会及び原子力安全委員会設置法〉〈日本原子力研究所法〉〈動力炉・核燃料開発事業団法〉〈原子炉等規制法〉〈放射線障害防止法〉が制定されている。
執筆者:天野 徹
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「原子力基本法」の意味・わかりやすい解説
原子力基本法【げんしりょくきほんほう】
日本の原子力の研究・開発・利用の基本方針を示す法律(1955年公布,1956年施行)。第1章第2条に目的を平和利用に限ること,および民主・自主・公開のいわゆる原子力三原則を掲げている点が外国の原子力法と大きく異なる。以下原子力委員会,原子力開発機関,原子力鉱物の開発取得,核燃料物質・原子炉の管理,特許・発明等に関する措置,放射線障害防止,補償等に関し規定。本法と原子力委員会および原子力安全委員会設置法,総理府設置一部改正法(総理府内に原子力局を設置)を合わせて原子力三法と呼び,日本の原子力政策の根幹をなしてきたが,福島第一原発の史上最悪レベルの大事故発生で,抜本的な見直しがせまられている。
→関連項目原子力管理|原子力産業|原子力発電|武谷三男|日本原子力研究所
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原子力基本法
げんしりょくきほんほう
原子力の研究、開発、利用を推進することによって、将来におけるエネルギー資源を確保し、学術の進歩と産業の振興を図り、もって人類社会の福祉と国民生活の水準向上とに寄与することを目的とした法律。1955年公布された(昭和30年法律第186号)。「基本方針」として、「原子力の研究、開発及び利用は、平和の目的に限り、安全の確保を旨として、民主的な運営の下に、自主的にこれを行うものとし、その成果を公開し、進んで国際協力に資するものとする」と規定し、いわゆる「原子力三原則」(民主、自主、公開)を明確にし、世界唯一の原爆被害国として、原子力を核兵器などの軍事目的に利用することを禁止した。原子力基本法では、原子力・核燃料物質・核原料物質・原子炉・放射線等の用語の定義、原子力委員会及び原子力規制委員会、原子力の開発機関、原子力に関する鉱物の開発取得、核燃料物質の管理、原子炉の建設等の規制、特許発明等に対する措置、放射線による障害の防止、損失補償についての基本的な事項などを定めている。
[宮田三郎]
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原子力基本法
げんしりょくきほんほう
昭和30年法律186号。日本の原子力の研究,開発,利用は平和目的のみにかぎられること,それも民主,自主,公開の三つの原則に基づいて進められることを明記した法律。原子力規制委員会,原子力防災会議および原子力委員会,開発機関として日本原子力研究開発機構を設けることをはじめ,核燃料や原子炉の管理,放射線による障害の防止など原子力に関する基本を定めている。
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原子力基本法
げんしりょくきほんほう
日本における原子力の研究・開発・利用の根本原則を定めた法律。1955年(昭和30)に公布・施行。「原子力の研究,開発及び利用は,平和の目的に限」るとしたうえで,自主・民主・公開のいわゆる「原子力平和利用三原則」を明記。ほかに原子力行政の骨格をなす原子力委員会,原子力安全委員会,原子力研究所,動力炉・核燃料開発事業団の設置なども規定している。
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世界大百科事典(旧版)内の原子力基本法の言及
【原子力産業】より
…日本でも,この演説の直後,54年3月に総額2億3500万円の原子力予算が成立した。同年4月,日本学術会議が〈公開・民主・自主〉の原子力平和利用三原則([原子力三原則])のもとに原子力の研究・開発・利用を進めるべきことを唱えた声明を決議,翌55年には,この原子力三原則を取り入れた[原子力基本法],原子力委員会設置法,原子力局設置に関する法律の原子力三法が成立した。56年1月に政府の[原子力委員会],同年3月に民間の[日本原子力産業会議](経団連と電気事業連合会が中心となって組織)が発足,さらに5月に科学技術庁,6月には特殊法人として[日本原子力研究所]が設立され,官民の研究開発体制は急速に整えられた。…
※「原子力基本法」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」