1972年の第27回国連総会決議2997に基づいて、環境の保護と改善を目的に設立された国連総会の下部機関。略称はUNEP。事務局本部はケニアのナイロビに置かれており、世界に六つの地域事務所がある。当初、管理理事会は58か国で構成されていた。しかし、2012年に開かれた国連持続可能な開発会議(リオ+20)において、UNEPの強化策として、管理理事会をすべての国連加盟国が参加できるUNEA(国連環境総会)に改組することが決められた。
1972年6月の国連人間環境会議(ストックホルム会議)で採択された「人間環境宣言」および「環境国際行動計画」に基づいて、環境にかかわる諸活動の全般的な調整を行い、新たな問題に関する国際協力を行うことを目的としている。対象とされる分野は、温暖化、オゾン層、海洋環境、生物多様性、水資源、土壌、有害廃棄物、化学物質、重金属など、さまざまな分野にわたる。
その関連で、環境法制度の整備も重視されており、環境問題の調査研究と注意喚起、環境条約の作成と批准の促進、対応する国内法の整備と執行確保などが行われてきている。環境条約については、ワシントン条約、オゾン層保護のためのウィーン条約、バーゼル条約、生物多様性条約などの事務局機能も担っている。他方、国内法の整備と執行確保については、開発途上国に対して、法令遵守に関する能力構築および技術支援を行ってきており、そのための「バリ戦略計画」を第23回管理理事会(2005)において採択した。
なお、大阪に、国連環境計画国際環境技術センターが設置された。
[磯崎博司 2021年9月17日]
国連環境計画国際環境技術センター(UNEP-IETC:UNEP-International Environmental Technology Centre)は、持続可能な都市および淡水湖沼流域の管理について国連環境計画の役割を強化することを目的としている。1991年5月の国連環境計画管理理事会決議16の34に基づいて1992年(平成4)10月に日本に設置され、1994年4月には大阪市と滋賀県草津市に事務所が開設された。大阪事務所は大都市の統合的環境管理(廃棄物管理プログラム)を、滋賀事務所は淡水湖沼集水域の統合的環境管理(水・衛生プログラム)を中心に活動した。
そのうち、廃棄物管理プログラムの背景には、開発途上国では、電気電子機器廃棄物(WEEE)、農業バイオマス廃棄物、プラスチック廃棄物などが急増していることがある。それらの廃棄物の大半は環境上健全な技術(EST:Environmental Sound Technology)により再生利用が可能である。そのため、廃棄物管理プログラムは、3R(Reduce、Reuse、Recycle)を基礎として、すべての利害当事者が参加したうえで適切な管理と再生処理を行うことを目的としており、実証・パイロット(試験的)プロジェクト、技術支援、能力開発などが行われている。
また、水・衛生プログラムは、「持続可能な開発に関する世界首脳会議」(WSSD:World Summit on Sustainable Development、2002年)および「ミレニアム開発目標」(MDGs:Millennium Development Goals)に定められている「安全な飲料水と衛生設備が確保できない人々の割合を半分にする」という目標の達成に向けて、上水供給および排水管理に必要とされる環境上健全な技術(EST)の普及を目的として、必要とされる支援を提供した。
2011年(平成23)に、滋賀事務所は閉鎖されて大阪事務所に統合された。それ以降、IETCは、引き続き環境上適正な廃棄物および化学物質の規制管理に重点を置き、そのための世界的な拠点としての役割を果たしてきている。また、2020年(令和2)からは、「UNEP持続可能性行動」を展開しており、横断的なネットワークを構築して、国連・政府・企業・市民・その他団体の連携・協働を促進し、資源循環や持続可能な社会を目ざす活動を支援している。
[磯崎博司 2021年9月17日]
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1972年6月の国連人間環境会議(ストックホルム会議)で採択された勧告に基づき,地球環境問題に専門的に取り組む機関として,1973年3月に設置された政府間の国際組織。略称はUNEPで,ユネップとも呼ばれる。その仕事は国連の環境政策を立案・調整し,国連システム内の各種専門機関によるその執行を監督するとともに,一部の環境活動に援助を与え,自らも実施する。本部はケニアの首都ナイロビ。地球の汚染状況の的確な把握や,国際条約・協定の締結,環境保全に関する各種国際会議の開催・支援,オゾン層保護条約の条約案の作成やウィーンにおける会議の開催,モントリオール議定書策定のための作業部会の設置,地球温暖化防止条約づくりのための交渉,砂漠化防止対策など多くの重要施策を手がけてきている。
→オゾン層
執筆者:編集部
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[国際機関]
全地球的視野で解決を要する天然資源,食糧,環境,衛生,エネルギーなどの諸問題についての活動が展開され,また発展途上国の国民経済の発展を図るための科学技術力の強化を図る援助活動が続けられている。国連における〈開発のための科学技術政府間委員会〉〈新・再生可能エネルギー政府間委員会〉などは総合的なものであるが,発展途上国援助につき国連開発計画(UNDP),国連貿易開発会議(UNCTAD),国連工業開発機構(UNIDO)などの機構において技術協力が活発化しており,また宇宙空間平和利用委員会,国連環境計画(UNEP)などの活動のほか,国際原子力機関(IAEA),国連食糧農業機関(FAO),世界保健機関(WHO),国連教育科学文化機関(UNESCO)等の専門機関が,それぞれ技術援助や情報活動を行っている。また経済協力開発機構(OECD)においては,科学技術政策委員会(CSTP)などいくつかの委員会で交流が行われている。…
…無知,無関心であるならば,我々は,我々の生命と福祉が依存する地球上の環境に対し,重大かつ取返しのつかない害を与える〉ことになり,その意味で〈歴史の転回点に到達した〉(人間環境宣言)との認識を共通に持つことができ,これが会議を成功裡(り)にまとめる支えとなった。具体的な成果としては,人間環境宣言や行動計画の採択,環境分野の企画調整機関としての国連環境計画(UNEP)の新設(本部はナイロビ)とその運営資金たる環境基金の創設(1973),日本の提案になる世界環境デー(毎年6月5日)の制定,海洋投棄防止条約等の各種条約,協定の締結等がある。 この会議は,その後に開催された一連の大会議(1974年の世界人口会議,76年の国連人間居住会議(HABITAT),77年の国連水会議と国連砂漠化防止会議など)のはしりともなり,人類社会が直面する重要問題への挑戦の第一弾として永く記憶されるであろう。…
※「国連環境計画」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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