地方自治体の運営や予算、首長や議員を解職できる住民直接参加の手続きなどを定めた法律。有権者数の3分の1以上の署名が集まり選挙管理委員会が有効と認めれば、代表者が選管に解職を請求し60日以内に賛否を問う住民投票が実施される。有効投票の過半数が賛成すれば解職が成立する。法定数に達していなくとも、署名を水増ししたりした場合は3年以下の懲役か禁錮、または50万円以下の罰金が科される。署名とともに求められる押印は指印も認められているが、同法に指印の偽造に関する明確な規定はない。
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地方自治に関する基本法。地方自治の本旨に基づいて,地方公共団体の区分ならびに地方公共団体の組織および運営に関する事項の大綱を定め,あわせて国と地方公共団体との間の基本的関係を確立することにより,地方公共団体における民主的にして能率的な行政を図るとともに,地方公共団体の健全な発達を保障することを目的としている(1条)。1947年公布。日本国憲法は,地方自治に関する1章(第8章)を設け,地方自治を保障しているが,地方自治法は,憲法92条で予定された(憲法)付属法律ともいうべきものであり,地方自治の基本原理たる〈地方自治の本旨〉(憲法92条)に基づいて制定された法律である。
新憲法の制定以前においても,予定される新憲法の下での地方自治法制の基調をなす,地方分権の徹底,住民の権利の拡充,地方公共団体の自主性・自律性の強化,地方公共団体の行政の能率化と公正の確保という基本原則に沿った改革が,地方自治法の制定に先だって,部分的に実施されていた。旧来の東京都制,府県制,市制,町村制などの地方制度を改め,統一的な地方制度を確立し,住民自治を実現する趣旨から,都道府県・市町村の長の住民による直接選挙制や地方行政への住民の直接参政の制度を導入し,団体自治を強化する趣旨から議会の権限を強化する,などの改革であったが,必ずしも〈地方自治の本旨〉に基づく徹底した改革ではなかった。このような状況下に,日本国憲法とともに施行された地方自治法は,(1)従来の国の普通地方行政官庁としての地方長官による地方行政を改め,都道府県を市町村とならぶ完全自治体たる普通地方公共団体とし,知事の官選官吏制を完全に廃棄したこと,(2)地方公共団体に対する内務大臣をはじめ国の一般的監督権を否認し,地方公共団体の自主性・自律性を強化するとともに,地方議会に常任委員会制を採用し,調査権などを認めて議会の権限を強化したこと,(3)大都市問題にかかわり,特別市の制度を設け,東京都の区を特別区として市なみの権能を認めたこと,などが特色となっている。
地方自治法は,その後,相当の回数にわたり重要な改正を経てきている。まず,1947年から50年までの諸改正は,おおむね,地方制度の民主化と分権化を徹底させ,地方自治を拡充強化するものであり,それは,自治体警察を創設する旧警察法の制定や内務省の解体,教育委員会法および地方財政法の制定(ともに1948公布)などにみられる流れに沿うものであった。次に,52年4月の講和条約発効を画期として,60年ごろにかけての諸改正は地方自治行政の再編合理化と簡素能率化に重点を置いた,中央集権的傾向の改正を内容としている。この間の諸改正は,自治体警察と国家地方警察を廃止して現行の都道府県警察を設ける警察法の改正(1954)や,教育委員会法を廃止し,代りに,〈地方教育行政の組織および運営に関する法律〉(1956公布)を制定して教育委員の公選制を任命制に改めたこと,などと軌を一にするものであった。次に,60年ごろから70年代にかけての諸改正は,中央政府主導型の高度経済成長政策や地域開発政策に伴う広域行政優先および自治体合理化を内容としていた反面,公害・環境問題,都市問題,社会福祉問題などが地方公共団体の行政需要を高めたことに対応して,〈消費者の保護〉や〈公害の防止……その他の環境の整備保全〉を自治事務に追加するなどの内容が見られた。
地方自治法は,制定・施行以後,さまざまな沿革を経て今日に至っている。明治憲法下において認められていなかった地方自治を保障する日本国憲法下において,国民の基本的人権の保障と実現のために地方公共団体が国と並立対等の地位を与えられ,同時に民主主義の制度として住民自治に支えられた地方自治の実現を目的とした地方自治法が,その趣旨に適合的かつ必要な改正を受け,また,その趣旨から解釈されねばならないことはいうまでもない。
なお,地方自治法に関連する主要な法律としては前記のほか次のようなものがある。すなわち,地方公共団体の長および議員の選挙については公職選挙法,地方公務員については地方公務員法,教育公務員特例法(1949公布),地方財政および地方税制については地方財政法,地方税法,地方交付税法,地方公営企業については地方公営企業法(1952公布),地方公営企業労働関係法,警察組織については警察法,消防組織については消防法,教育行政組織については〈地方教育行政の組織及び運営に関する法律〉等がある。また,各地方公共団体の条例や規則も重要である。
→地方財政 →地方自治
執筆者:福家 俊朗
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日本国憲法第8章の地方自治条項に基づいて定められた法律(昭和22年法律第67号)。地方公共団体の区分、組織および運営に関する基本的事項を定めており、日本の地方自治法制のもっとも基本的な法律である。憲法付属法律の一つとして日本国憲法と同日に施行された。それまでの明治憲法下では地方政治に関する規定を置かず、地方制度はもっぱら法令の定めるところに委ねていた。明治憲法下の地方制度であった、都道府県知事の官選を含む東京都制、道府県制、市制および町村制は廃止されることになった(地方自治法附則2条)。
地方自治法は、第1編総則で、地方公共団体の種類とそれが担当する事務を定めている。地方公共団体に法人格を付与したうえで、これを普通地方公共団体と特別地方公共団体に大別する。普通地方公共団体は都道府県と市町村の2種類に、特別地方公共団体を特別区、組合および財産区の3種類に区別している。普通地方公共団体は「地域における事務」と「法律又はこれに基づく政令により処理することとされた事務」を担当する。
第2編では、(1)都道府県・市町村の境界の変更・編入、市町の要件などの地方公共団体の区域、(2)住民の意義や権利(選挙権、条例の制定・改廃請求権、事務の監査請求権、議会の解散請求権)、(3)議会の条例制定権、長の規則制定権や条例等の公布手続、(4)選挙権・被選挙権の要件や直接請求の手続(条例の制定・改廃請求、議会の解散請求、長の解職請求など)、(5)議会の組織や運営、(6)地方公共団体の長の地位と権限、補助機関や委員会の設置と権限、(7)長や職員等に対する給与等の支給方法など、(8)普通地方公共団体の会計や予算、契約、財産管理、(9)公の施設の設置・管理、(10)住民監査請求手続や住民訴訟手続、(11)国の関与に関する原則や手続、国・普通地方公共団体間の紛争解決手続、(12)指定都市や中核市などの指定要件や事務配分などが規定されている。
第3編では、特別地方公共団体の特別区、組合や財産区の組織や運営に関することが規定されている。
地方自治法はその制定以来、数多くの改正が行われてきた。たとえば、1952年(昭和27)の改正では、国が地方公共団体に対して技術的な助言や勧告を行う権限の付与や団体委任事務および機関委任事務の法定化(別表に規定)、1956年の改正では、市町村を「基礎的な地方公共団体」、都道府県を「広域の地方公共団体」と規定するとともに、都道府県の事務が法定化され、1974年の改正では特別区の区長の公選制が復活することとなった。1991年(平成3)の改正では、機関委任事務に対する議会と監査委員による監査制度が導入され、職務執行命令訴訟が簡略化され、長の罷免制度も廃止されることとなった。
1999年の改正では、明治憲法下の市制・町村制以来の機関委任事務が廃止され、地方公共団体が処理する事務はすべて同団体の事務となった。国の地方公共団体への関与については、関与の必要最小限度原則、関与の法定主義、関与手続の適正化の仕組みが定められた。さらに、国・地方公共団体との紛争処理のための機関として国地方係争処理委員会が設置され、国の関与に対する不服申立て手続と訴訟手続が制度化されることとなった。
これ以降も、住民訴訟の被告を長や職員から執行機関等とすること(2002)、指定管理者制度の導入(2003)、全部事務組合、役場事務組合、地方開発事業団の廃止(2011)、国等による違法等確認訴訟制度の導入(2012)、議会が長等の損害賠償責任の一部免責を条例で定めることを認める(2017)などの改正がなされている。
[山田健吾 2024年2月16日]
『俵静夫著『地方自治法』(1975・有斐閣)』▽『松本英昭著『要説 地方自治法――新地方自治制度の全容』第十次改訂版(2018・ぎょうせい)』▽『宇賀克也著『地方自治概説』第10版(2023・有斐閣)』
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(北山俊哉 関西学院大学教授 / 笠京子 明治大学大学院教授 / 2007年)
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日本国憲法が保障した地方自治実現のため1947年(昭和22)に制定された地方自治の基本法。旧憲法で国の地方行政機関であった府県を自治体化するため,従来の都道府県制,市制・町村制などと地方官制を統合して制定され,地方公共団体の組織と運営,国と地方公共団体の関係の基本を規定する。制定直後から頻繁に改正され,50年までは地方自治強化の方向がみられたが,講和後は自治行政の簡素化・能率化の見地からの改正に重点がおかれた。その後も地域開発や広域行政への対応や住民の要求に対処するための法改正も行われている。
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…経済社会の激動と進展にもかかわらず,救貧法は貧民の汚名stigmaと恥辱なしには与えられることがなかった。1929年の地方自治法は公的扶助をカウンティとカウンティ・バラの議会の責任としたが,救貧法が廃止されたのは48年国民扶助法によってであった。 1834年法以来,貧困は個人の責任であり,救済を受けることは,人権の喪失であり,貧民の汚名を一生のあいだ負うという意識が一般民衆にしっかり植えつけられてしまった。…
…このようなことが可能であったのは,英国国教会が国教会であって,教会と国家とが組織的に一致していたからである。19世紀に入るとその矛盾がようやく明確になり,1894年の〈地方自治法〉によって,地方自治の最小単位として村会が設けられ,村長・助役が置かれた。これまで議会の法令の定めに従って教区書記が保管してきた地図(公図),諸記録は,村会に引き渡された。…
…日本国憲法と地方自治法は地方自治制度の組織と運営の原則を定めているが,その構成単位である地域住民によって組織された法人格をもつ地方団体を〈地方公共団体〉と名づけている。第2次大戦前にはこの種の団体は法人格をもっていたが,単に〈地方団体〉と称していた。…
…改革への総司令部の強い意志を感じとった内務省は,1946年9月地方団体首長の直接普通選挙制をはじめとする地方制度の抜本的な改正を行った。さらに46年11月日本国憲法が公布され,47年4月公布の地方自治法とともに47年5月に施行された。新憲法は第8章に〈地方自治〉を設けこれを保障し,地方自治法は,強制予算・原案執行等の全廃,内務大臣・知事に属していた各種監督権の大幅な削減を行い,先の地方制度改正を民主化の方向へ徹底させた。…
…地方公共団体は,国とともに国民や住民の人権の保障と実現のための一種の統治団体(公法人。地方自治法2条1項)として多種・多様な行政を行う主体であるが(同法2条2,3項各号参照),地方財政法は,このような行政の経済的・物的基盤としての財政(地方財政)の運営や,国の財政と地方財政との関係等に関する基本原則を定め,それによって地方財政の健全な運営を図り,地方自治の発達に資することを目的として,地方自治法の付属関係法律として制定された(1948公布)。旧憲法下においては,地方行政・財政の運営の方針は命令や中央政府の行政措置に基づいていたが,現行憲法は地方自治を保障しその確立を図る目的から(日本国憲法第八章参照),地方公共団体の組織および運営に関する事項は〈地方自治の本旨〉に基づいて法律で定めることとした(92条)。…
…日本の地方公共団体の住民に認められているところの,ごく限られた直接民主制的な諸制度を総称することばである。地方自治法がこの直接請求という総称の下に認めているのは,(1)条例の制定・改廃請求,(2)事務の監査請求,(3)議会の解散請求,および(4)議員・長その他の役職員,選挙管理委員会の委員,公安委員会の委員の解職請求という4種の制度である。なお,教育委員会,農業委員会,漁業調整委員会の各委員に対しても,地方自治法以外の関係法律により,解職請求が認められている。…
※「地方自治法」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
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