二国間の協定(双務協定)に基づいて行われる双務貿易に対する語で、3か国以上の多数国間で多角的決済方式に基づいて行われる貿易をいう。双務貿易では2か国間の貿易収支が均衡することが求められるが、それはむずかしく、無理に均衡化させようとすると貿易が縮小する可能性もあり、望ましくない。これに対して多角貿易では、たとえ二国間で貿易収支の不均衡が生じても、多数国間で全体としてみて均衡化すればよく、貿易の拡大および良質安価な商品取引が可能である。多角的決済方式としては多角的清算協定や多角的支払協定がある。ともに双務協定によるよりも貿易を促進・拡大することができ、国際分業・自由貿易の利益を受けることができる。とくに後者は外貨の節約効果が大きい。代表例として1950~58年のヨーロッパ決済同盟(EPU)があげられる。第二次世界大戦後は、戦前の双務貿易による保護主義やブロック経済などの弊害に対する反省から、IMF(国際通貨基金)・ガット体制のもとで、貿易・為替(かわせ)制限の撤廃、自由・無差別の原則に基づく、多数国間のよりグローバルな多角的自由・無差別貿易が実行された。現在のWTO(世界貿易機関)の基本的理念の一つである。
[秋山憲治]
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…2国(あるいは地域)間の貿易が一方の輸出(または輸入)超過におちいり,貿易の拡大をさまたげる場合,第三国(地域)を介在させて3国(地域)間で決済する方式。3国以上にわたる場合は多角貿易multilateral tradeという。2国間で貿易収支を均衡させようとした場合には,輸出額の少ないほうに収支を合わせるため総貿易額は縮小しがちである。…
※「多角貿易」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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