瀬戸内海東端の陥没湾。東は大阪平野、西は淡路(あわじ)島、北は六甲(ろっこう)山地、南は和泉(いずみ)山脈に囲まれた内湾で、北西端の明石(あかし)海峡を通じて播磨灘(はりまなだ)に、南の友ヶ島で紀伊水道を経て太平洋につながっている。湾形は楕円(だえん)状で、長軸は北東―南西約60キロメートル、短軸は北西―南東約30キロメートル。面積は約1500平方キロメートル。海底は西側は深く、東側に浅く、平均水深27メートル。最大水深は紀淡海峡の部分で197メートルに及ぶ。潮流でもっとも速いのは明石海峡の毎時12キロメートル。湾内の海水の移動は河川水の影響とあわせ、長い時間でみると恒流とよばれる時計回りとなり、湾内の水質や底質の分布にも関係する。平均潮差は60センチメートル、過去の最高潮位は1934年(昭和9)9月21日、室戸(むろと)台風(第一室戸台風)時に記録したプラス4.6メートルで、以来湾岸の防潮堤設計の基準となっている。
大阪湾は、古くは茅渟海(ちぬのうみ)ともよばれ、白砂青松の景勝地が多く、須磨(すま)、舞子(まいこ)、浜寺などは詩歌に詠まれてきたが、いまでは多くはコンクリートの人工護岸に変わっている。
大阪が「なにわ」とよばれたのは、チヌ(クロダイ)をはじめとする魚貝類に恵まれた、「魚の庭(なのにわ)」からだともいわれる。漁獲高や漁家数は減少しているが、沿岸の砂泥域にカレイ、エビ、カニ、岩礁域にはクロダイ、カサゴ、マダコ、河口域にはスズキ、ボラ、表層付近にはイワシなど約230種の魚貝類がおり、種々の漁法で漁獲され、面積当りの漁獲量は瀬戸内海のほぼ2倍になる。
大阪湾では、古くから瀬戸内海と畿内を結ぶ舟運に恵まれ、難波(なにわ)、兵庫、堺(さかい)などの港が栄えてきた。明治以降も大阪、神戸の二大貿易港を中心に沿岸に近代工業が発達し、西宮、尼崎(あまがさき)から堺、岸和田などの都市の並ぶ阪神工業地帯を形成している。海岸を埋め立てて、神戸ポートアイランド、六甲アイランド、大阪北港の舞洲(まいしま)・夢洲(ゆめしま)、南港の咲洲(さきしま)、堺・泉北臨海工業地帯などを造成した。さらに泉州沖には1994年(平成6)、日本最初の24時間運用可能な関西国際空港が開港した。このような埋立地の多くは水深10メートル以下の浅海域に集中しており、生態系へ及ぼす影響には細心の注意が必要である。
[位野木壽一・安井 司]
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大阪平野と淡路島によって囲まれた海湾。古名を茅渟海(ちぬのうみ)といい,難波潟,摂津灘とも称した。明石海峡によって瀬戸内海の播磨灘と,友ヶ島水道(紀淡海峡)によって紀伊水道と連絡する。湾は北東~南西方向に約60kmの長軸,北西~南東方向に約30kmの短軸をもつ楕円形で,面積は1400km2である。明石海峡と友ヶ島水道の二つの出入口があるため潮流による水の交換はよい。湾の中央部には時計回りの環流がある。湾の東半分は深さ20m以下のなだらかな海底であるが,明石海峡,紀淡海峡の海底は潮流で浸食され,100m以上の深さである。海峡部の海底は砂,礫(れき),岩よりなり,それ以外の広い海底は泥が堆積しその厚さは30m以上にも達する。
執筆者:松本 英二 湾奥には淀川,大和(やまと)川,武庫川などが流入して,大阪平野の三角州が展開するが,北の六甲山地,南の和泉山脈,西の淡路島の津名丘陵はいずれも直接海に臨み,平地は狭小である。湾岸一帯は淡路島を除けば,都市化が進んだ日本有数の人口密集地帯であり,世界的貿易港で国内海上輸送の重要拠点でもある大阪港,神戸港の大型港湾施設をはじめ,阪神工業地帯の中心をなす臨海工業地帯が連なっている。大阪平野の海岸線では,江戸時代を通じて盛んであった干拓による新田開発に続いて,明治後期からの大阪,神戸の築港工事,さらに昭和30年代以降に大規模な海岸埋立て事業が相次いだ。大阪南港,北港,堺泉北,ポートアイランド,六甲アイランドなど,巨大な人工島も造成されている。また高潮対策のため防潮堤がつくられて,海岸線の大部分は人工海岸となり,白砂青松で知られた海水浴場はほとんど姿を消した。1994年泉佐野市の沖合に関西国際空港が開業し,98年4月には明石海峡に世界最長の吊橋,明石海峡大橋が開通した。水産業も淡路島沿岸や泉南地方沿岸に漁場が縮小されている。なお須磨,明石や泉南地方の海岸には,公園,釣場などのレクリエーション地が点在する。
執筆者:服部 昌之
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