(1)利息の天引き 消費貸借契約の締結に際し,利息をあらかじめ計算し,これを前払いの形式をもって(前払利息)元本額より控除して,差引残額だけを借主に交付し,期限には借主に名義上の元本額を返還させることをいう。たとえば,元本10万円,年18%の天引利息で貸すと,利息1万8000円を控除した額8万2000円を交付し,期限に10万円を返還させる方法である。法律上,従来,天引きに関する定めがなく,消費貸借の要物性(契約成立のためには,当事者の合意のほかに,現実に物の引渡しなどを要すること)および利息制限法に関連して疑義があった。判例は,天引利息が利息制限法の制限内利率であれば,後払利息の場合と同様に,借主に〈現金授受と同一経済上の利益〉を与えるから,約定元本額について消費貸借が成立するものとし,他方,制限を超過する場合には,現金授受と同一経済上の利益を与えるものではないから,超過部分について消費貸借は成立しないとした。学説は,問題は要物性にあるのではなく暴利性にあるのだと判例に反対した。このように,現行利息制限法(1954公布)は,天引契約においては契約どおり全額について消費貸借が成立するものとし,天引きは利息の前払いであると認め,ただ,利息制限法を適用するに当たっては,現実の受領額について利息制限法の許す最高額の利息を算出し,これを超過する天引部分は元本に充当するものとした(利息制限法2条)。
(2)その他の天引き 給料(賃金)は,原則としてその全額を支払うことを要し,使用者が恣意的に一部を控除して支払うことは許されない。しかし所得税の源泉徴収,社会保険料の控除など法令に定めがある場合や,労働者の代表との書面による協定がある場合は,給料の一部を天引きして支払ってもよい(労働基準法24条1項)。
勤労者の財産づくりを促進するために,1971年に勤労者財産形成促進法(1971公布)が制定された。貯蓄奨励と持家促進の2本の柱からできているが,貯蓄奨励については非課税扱いなど優遇措置がとられている。しかしその貯蓄は事業主が勤労者の給料から天引きして行うことになっている(財形制度)。
執筆者:森泉 章
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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