翻訳|Holocene
地質時代の区分の一つ。新生代第四紀の更新世から続く時代で、もっとも新しい世(せい)。約1万1700年前から現在までの期間。現世ともいう。この時代に形成された地層は完新統とよばれている。完新世はかつては沖積世といった。沖積層および対応する洪積層という語は、古く北ドイツなどで、丘陵などの上に残した氷河堆積(たいせき)物を洪積層、それを侵食した谷を埋める積物を沖積層とよんだことに由来する。しかし沖積層はその下半部が時代的には更新世であることが明らかになって、この名称は時代区分の名称としては国際的に使用されなくなっている。更新世末期には寒冷期と温暖期を繰り返しながら温暖化するが、最後の急激な寒冷事件(ヤンガー・ドリアス寒冷期)が終り、長期的、大規模な温暖化が始まったときを完新世の始まりとする。完新世は急速な温暖化と海面上昇を特徴とする時代である。人類はこの時代の始めごろから農耕を覚え、温暖な気候のもと人口が急増し、文明が発達した。
日本付近の海面高度は完新世の始めには現在より100メートル程低い位置にあったが、著しい温暖化とともに急速に上昇し、7000年前ごろには現在のレベルを超えてプラス3メートルまで上昇した。この現在より温暖な時期を気候最温暖期あるいはヒプシサーマルとよんでいる。その後海面はやや低下して現在の位置に至った。海面が上昇して、それまで陸上の河川であった低地に海水が侵入し、河川の堆積物の上に海の地層が堆積した。完新世のこの海進は、これらの地層とその相互関係が最初に記載された東京の地名をとって「有楽町海進」と命名されている。この海進により関東平野の低地に海が侵入し、かつての河川沿いに奥深い入江が形成された。この入江の沿岸には縄文早期から前期の貝塚が各所に形成されていて、このためこの海進は「縄文海進」ともよばれている。気候最温暖期には現在は九州西部に主要な分布の限界があるハイガイなどの亜熱帯の貝類が東北地方南部部にまで進出していた。房総半島の先端付近には小規模ながらサンゴ礁も形成された。
[鎮西清高 2015年8月19日]
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沖積世ともいう。地質年代区分の名称の一つ。正確には新世代第四紀完新世と称する。更新世(こうしんせい)の氷河時代のあとの時代で,約1万年前から現在まで続く。更新世における人類の発生とともに旧石器時代が長く続いたが,完新世はその後に続く中石器時代,新石器時代,青銅器時代,鉄器時代を包含するものである。
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後氷期・沖積世・現世とも。第四紀を二分した後期の地質時代で,1万年前から現在までの時代。更新世末期の最終氷期最盛期(1万8000年前)以降におきた地球的規模の温暖化は完新世以降も進み,約7000年前前後の数千年間にヒプシサーマル(高温期)をむかえた。この時期,日本列島の大半は現在よりも温暖で,海面も数m高かったといわれる。7000年前以降,気温はわずかながら上下変動をくり返し,海面も小規模な海退・海進がおきて現在に至る。
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…新生代の第三紀の後につづく紀で,地質時代の最後の紀である。第四紀はさらに氷河時代の更新世(洪積世)と後氷期の完新世(沖積世)に区分され,全体が約200万年前から現在までを含む時代である。なお,慣用的に〈だいよんき〉と読まれるが,正しくは〈だいしき〉と読む。…
…地質時代区分の一つ。完新世Holocene,あるいは現世Recentと同義である。第四紀を2分した後期の時代で,約1万年前から現在までを含んでいる。…
※「完新世」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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