銀行の取引先が、小切手・手形の支払いを委託することを目的に銀行との間で締結した当座取引契約に基づき預け入れておく預金で、要求払預金の一種である。日本では無利息である。預金者は、日常の営業活動に伴う支払代金の決済や代金回収を当座預金取引先である銀行に委託して行うことにより、事務負担や危険を回避することができる。また、当座預金者は、現金通貨を用いないで、当座預金口座を使用して、手形・小切手により代金を決済できるため、当座預金は通貨としての機能を有する典型的な預金通貨といわれる。当座預金は、法人による決済口座としての使用がほとんどである。その際、金融機関は、取引先である法人が口座残高を超えて極度額まで決済を認める「当座貸越契約」を締結することがある。なお、個人が当座預金を割賦金やカード・ローンの返済専用口座として使用することもある。口座開設を認めた金融機関は、自らの手形・小切手の自由な使用とその金融市場での流通を認めることになるので、取引先の不渡りが多発すれば、その金融機関の信用は低下する。したがって、金融機関は、当座取引申込み先については、身元、経歴、信用状態、資産、行為能力、過去の手形・小切手事故の有無などについて十分調査確認して取引の諾否を決定する。当座預金は預金保険制度上の決済用預金なので、全額保護される。
[太田和男]
小切手あるいは手形により,随時支払が行われる要求払預金である。金銭支払が多様な形で大量に行われる今日の法人においては,現金支払に伴う金銭出納の煩雑さや危険を避け,商取引の拡充を図るため,当座預金を利用した小切手や手形支払が最も一般的な資金決済手段として用いられている。また,振り出された小切手や手形は,現金に準じた預金通貨として市中を流通する。たとえば,A銀行に当座預金を有する甲が乙に支払をしようとする場合,甲が乙に対し小切手を渡せば,乙はA銀行から現金支払を受けることもできるし,あるいは乙の取引銀行B銀行を通じて小切手の支払呈示を行い,みずからの口座にその代金を入金することもできる。一方銀行は,預金者との当座勘定取引契約に基づき,資金受払いの事務処理を委任されている。これには手数と費用がかかり,かつつねに相当の支払準備を要して資金運用が制約されるため,当座預金は通常無利子である。当座預金は信用経済の発展につれて必要度を増す預金であり,今日ではパーソナル・チェック(個人小切手)と呼ばれる個人家計向けの当座勘定もある。
執筆者:小林 元
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… 預金は,その預入れの動機の面から,営業(性)預金,所得預金,貯蓄(性)預金,暫定(性)預金の四つに分類される。営業(性)預金とは,企業または個人がその営業資金の出納を銀行に代行させるために預け入れるもので,出し入れが頻繁で,出納預金とも呼ばれ,おもに当座預金がこれに該当する。所得預金は,個人所得者が日常の収入金や一時的な余剰金をいちおう預け入れ,必要のつどこれを払い出していくもので,普通預金が主としてこれにあたる。…
※「当座預金」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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