徳川実紀(読み)とくがわじっき

精選版 日本国語大辞典 「徳川実紀」の意味・読み・例文・類語

とくがわじっき トクがはジッキ【徳川実紀】

江戸後期、幕府編纂の史書総裁林述斎編述成島司直ほか。文化六年(一八〇九)起稿、天保一四年(一八四三完成。家康から第一〇代家治に至る歴代将軍ごとに治績を詳細に叙述する編年史出典を明示し、おおむね正確な記録であるが、時に実録の読物的な記述も混入する。嘉言徳行を付録とする。江戸時代史研究の基本書。第一一代家斉以降は「続徳川実紀」に記述されている。原題は「御実紀」。

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デジタル大辞泉 「徳川実紀」の意味・読み・例文・類語

とくがわじっき〔トクがはジッキ〕【徳川実紀】

江戸後期の史書。516冊。江戸幕府が大学頭林述斎を総裁として、成島司直らに編修させたもの。文化6年(1809)起稿、嘉永2年(1849)完成。徳川家康から第10代家治までの、歴代将軍ごとに区分した編年史。なお、第11代家斉以降を記した「続徳川実紀」がある。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「徳川実紀」の意味・わかりやすい解説

徳川実紀
とくがわじっき

初代家康(いえやす)以来10代家治(いえはる)に至る徳川将軍の実録。本編には編年体で歴代将軍の政治的業績を収録し、付録にはその嘉言(かげん)・善行を集め記す。本名は『御実紀』で、『徳川実紀』は俗称。「東照宮(家康)御実紀」のほかは歴代ごとに諡(おくりな)を冠して、「台徳院殿(たいとくいんでん)(2代秀忠(ひでただ))御実紀」などと題をつけた。大学頭(だいがくのかみ)林衡(たいら)(述斎)総裁のもと、成島司直(なるしまもとなお)が執筆、1809年(文化6)に稿をおこして1843年(天保14)に正本、1849年(嘉永2)に副本が完成。本編447冊、付録68冊、ほか成書例・総目録・引用書目1巻を加えて総計516冊。日本では『文徳(もんとく)実録』『三代実録』を、中国では唐の『順宗実録』や明(みん)朝・清(しん)朝の実録を模範とした。達意の仮名交じり文で記述は正確だが、将軍の事績を褒めすぎたのが欠点。その続編が『続徳川実紀』で11代家斉(いえなり)から15代慶喜(よしのぶ)に及ぶ。ただし家斉・家慶(いえよし)2代だけが整備、他の3代は史料を配列、綱文をつけたにすぎない。編修の体は正編に同じ。編修は1870年(明治3)まで続行された。黒板勝美監修『新訂増補 国史大系』(正38~47、続48~52)に所収

[宮崎道生 2016年4月18日]

『坂本太郎著『日本の修史と史学』(1958・至文堂)』

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改訂新版 世界大百科事典 「徳川実紀」の意味・わかりやすい解説

徳川実紀 (とくがわじっき)

江戸時代の史書。江戸幕府編纂。516冊(本編447冊,付録68冊,成書例・総目録・引用書目1冊)。大学頭林述斎を総裁とし,成島司直(もとなお)を主任格に20名余の編纂員で撰述し,1809年(文化6)起稿,43年(天保14)に完成。正本献上につづいて副本が作成され,49年(嘉永2)に完成。副本には出典を注記し,林韑(あきら)(復斎),成島良譲(筑山,稼堂)らが従事した。徳川家康から10代家治までの将軍の実紀で,一代ごとに将軍の言行,逸事などを叙述した付録を付してある。各代の将軍の巻は《東照宮御実紀》《台徳院殿御実紀》のように廟号で表題とし,総称して当時は《御実紀》と称した。《徳川実紀》《徳川家実紀》の名称は明治以後に付されたものである。編纂の方針は,巻頭の御実紀成書例に細叙されているが,幕府はもちろん,各藩との動静も記され,近世史研究の重要史料の一つである。家斉以後も編纂を続行したが成書に至らず,史料のみまとめられた(《続徳川実紀》)。正編,続編ともに《新訂増補国史大系》に収められている。
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山川 日本史小辞典 改訂新版 「徳川実紀」の解説

徳川実紀
とくがわじっき

江戸幕府編纂の史書の通称。編纂当時は「御実紀」とよばれた。徳川家康から10代家治(いえはる)までの徳川将軍家の事績を編年体にまとめ,各将軍ごとに逸事を記した付録をつける。総計517冊。林述斎(じゅつさい)が監修し,成島司直(もとなお)が編集主任として執筆した。1809年(文化6)起稿,43年(天保14)に正本が完成した。幕府日記をはじめ当時収集しうるかぎりの史料が広く求められ,初期に関する部分を除けば一次史料にもとづくことをめざしている。記事内容は将軍の起居を中心に賞罰・儀式・人事など江戸城内での出来事に関したものが多い。11代将軍以降の分について続編編纂も始められたが,完成までには至らなかった。

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百科事典マイペディア 「徳川実紀」の意味・わかりやすい解説

徳川実紀【とくがわじっき】

家康から家治に至る徳川家10代の歴史。御実紀(ごじっき)とも。通巻516冊。1809年―1849年,林家の下に成島司直(もとなお)が撰修。将軍ごとに年月を追い事績を叙述。11代家斉以降も続いて編修し《続徳川実紀》としたが,未完のまま明治維新を迎え,幕末期は史料の列挙のみ。近世史研究の根本史料の一つ。
→関連項目国史大系林述斎

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「徳川実紀」の意味・わかりやすい解説

徳川実紀
とくがわじっき

江戸幕府が編纂した徳川家の歴史書。 516巻。林述斎の監修のもとに文化6 (1809) 年着手,嘉永2 (49) 年完成。初代家康から 10代家治に及ぶ。家康の部は必ずしも正確であるとはいえないが,ほかの歴史については典拠に基づく叙述が続いている。なお 11代家斉以降について『続徳川実紀』の編纂を続けたが,未完成のまま終った。『徳川実紀』『続徳川実紀』ともに『国史大系』に所収。

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旺文社日本史事典 三訂版 「徳川実紀」の解説

徳川実紀
とくがわじっき

江戸後期,初代将軍徳川家康から10代家治 (いえはる) に至る将軍家の編年史
『御実紀』ともいう。517巻。1809年林述斎らが幕命をうけて編集に着手,'43年に正本,'49年に副本が完成。11代家斉 (いえなり) 以後は『続徳川実紀』に収録したが未完成。各将軍のおもな治績を記載し,内容は比較的正確で,江戸幕政研究の重要史料。

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世界大百科事典(旧版)内の徳川実紀の言及

【江戸幕府日記】より

…また特殊なものであるが《幕府書物方日記》225冊(内閣文庫蔵,《大日本近世史料》所収)も有名である。幕府日記は作成に精粗があるうえ,1657年(明暦3)の大火による焼失をはじめ,散逸したものも多いので,広く残編断帙を探って編纂した《徳川実紀》にその代役を求めるのが便利である。【大石 慎三郎】。…

※「徳川実紀」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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