投資(読み)トウシ(その他表記)investment

翻訳|investment

デジタル大辞泉 「投資」の意味・読み・例文・類語

とう‐し【投資】

[名](スル)
利益を得る目的で、事業・不動産・証券などに資金を投下すること。転じて、その将来を見込んで金銭や力をつぎ込むこと。「土地に投資する」「若いピアニストに投資する」
経済学で、一定期間における実物資本の増加分。
[類語]出資融資投下

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精選版 日本国語大辞典 「投資」の意味・読み・例文・類語

とう‐し【投資】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 事業に資金を投入すること。出資。また、利回りを考えて、株券、債券などの購入に資金をまわすこと。〔英和商業新辞彙(1904)〕
    1. [初出の実例]「旦那様は利益のある有利の事業に御資本を投資(タウシ)なされては如何でありますか」(出典:続いたづら小僧日記(1909)〈佐々木邦訳〉)
  3. 工場・機械や、原料・製品の在庫品などの資本財の年々の増加分。

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改訂新版 世界大百科事典 「投資」の意味・わかりやすい解説

投資 (とうし)
investment

将来得られるであろう収益を目的として,現在資金を支出することを投資という。

投資は,その対象によって,物的投資と金融投資とに分けられる。物的投資には,主として非居住用建物,構築物,機械設備,装置,輸送運搬機器などの設備投資,製品,原材料への在庫投資および住宅投資がある。金融投資は,株式,債権などの有価証券への投資である。これは,企業が物的投資を行う資金を融資する点で間接的に物的投資と結びついている。

投資は,それを行う主体および目的によって,公共投資(あるいは政府投資)と民間投資に分けられる。公共投資の主体は中央政府,地方政府などの公的機関である。公共投資は,生活関連の社会資本(上・下水道,ごみ処理,道路,鉄道,公園,治水,学校,図書館,音楽ホール,病院などの諸施設),および産業基盤関連の社会資本(上記の重複分を除いて,港湾,橋梁など)への投資をいう。この投資は,公共財公共サービスを供給することを目的としている。現在の公共投資は,将来に公共財・公共サービスを供給するという点で,ある収益が期待されるのであるが,この収益は特定の個人に帰属するのではなく,現在および将来における各世代の人々に社会的に帰属するものとなる。

 民間投資の主体は個人および民間企業である。消費者としての個人が投資主体となる場合としては,住宅投資がある。個人の住宅投資は,住宅を建設することによって住宅が供給する居住サービスを将来の一定期間(耐用期間)にわたって確保することを目的としている。この場合の投資の収益とは,上記の居住サービスである。

 民間企業(個人企業も含む)が行う設備投資は,資本財を購入して生産設備とし,それによって商品を生産して市場に供給し収益を得ることを目的としている。資本財は,その物理的耐用年数の間の各期に労働とともに生産活動に用いられ,資本用役を供給する。この資本用役とは,たとえばプレス機械が金属板をプレスして型をつくるという仕事をすることである。近代経済学では,資本用役の量は資本財の量に比例するものであると想定されている。資本用役の単位期間当りの費用(1単位当り)を資本用役費用または資本用役価格という。資本用役価格は,単位期間当りの利子率と減価償却率の和に資本財の価格を乗じたものである。これは,資本財1単位当りの時価評価額に対する利子支払額と減価償却費の和(より厳密には,これから資本財の予想値上がり益を控除する)に等しい。

 資本用役量を1単位増加させることによる生産物の産出量の増加分を投資(用役)の限界生産力という。投資の限界生産力は,資本用役量の増加とともに低下する。そして,投資の限界生産力価値が純生産物価格(生産物1単位の付加価値)1円当りの資本用役価格を上回るかぎり,投資を増加させることは有利である。投資は,上の両者が一致するとき最適の大きさとなる。いいかえると,追加的な1単位の資本財への投資1円当りの収益(生産金額-原材料燃料動力費-人件費)の増分(投資の限界効率)が,利子率と減価償却率の和(より厳密には,これから資本財の価格の予想上昇率を控除する)に等しくなるような投資が最適値である。

投資の限界効率は,生産物価の上昇あるいは資本財価格の上昇が予想されると上昇する。したがって,投資の規模もそれに誘発されて増加する。これに対して,利子率および減価償却率の上昇は投資の規模を縮小させるであろう。このような投資の動きは,結局は現在の利子率の水準と減価償却率の大きさ,および生産物市場の将来期待の状態に依存していることになる。このように現時点において,他の経済的諸要因の動向に依存して決定される投資を誘発投資という。

 現実に発生する投資のなかには,投資を誘発する要因が何であるかが明確でない投資,あるいは要因は明確であってもその作用がきわめて直観的にしかとらえられないような投資,あるいはまた,投資の決定要因が明らかに国内の民間経済の動きと相互依存的に動くものではない投資などがあると考えられている。これらの投資を総称して独立投資あるいは自律的投資と呼ぶ。独立投資の代表的なものは公共投資である。

 投資の現実の経済における変動の様相を観察してみると,投資は経済規模の拡大する時期にそれ以上のテンポで増大していることがわかる。この事実をとらえて,投資が基本的には生産物の需要の変化と密接な関係があるらしいというアイデアにしたがって,投資は需要の変化に加速的に反応誘発されるという一種の経験法則が注目された。これを投資の加速度原理という。さらに,この加速度原理と同一の現象を投資と企業利潤との関係として観察すると,両者の間にかなり密接な関係が見いだされる。そこで,この側面を重視して,投資は現実の利潤の変動に強く依存しているという見方をすることもできる。これを投資の利潤原理という。この二つの原理はそれぞれが観察事実による経験法則(きわめて不安定ではあるが)として注目されたが,その後,この二つの原理は企業の合理的行動の特殊な状況による発現のしかたとして経済理論的に裏付けされるようになった。

 投資は,国民経済全体の長期的発展および景気循環をひき起こす主要因の一つであると考えられている。一度投資が発生すると,資本財の需要増加が経済各部門の需要を刺激して,最初に発生した投資のある倍率だけの需要増加を誘発する。そこで,この投資の効果を投資の需要創出効果,ないし乗数効果という(〈乗数理論〉の項参照)。投資は,資本財を新たに購入して生産活動に利用することになるので,既存の生産設備による生産物供給能力に対して,他の事情に変化がないかぎり,生産物の供給能力の増加をもたらす。これを投資の生産力効果という。これら二つの効果を総称して,投資の二重効果という。

投資の一つとして,生産活動および生産物の供給の円滑化を図ることを意図して,あるいは将来の生産物・原材料の価格の変化に対応するために,企業は原材料・製品などの一定量を手元に余分に保有するのが普通である。このような投資を原材料・製品などへの在庫投資という。将来価格の変化に対応するといっても投機的な危険を避ける程度のものを指している。このような在庫投資の部分を除く在庫投資については,投資主体は在庫保有のコスト(倉敷料など)と在庫を少なくすることによって生産を絶えず調整するコスト(起動費など)の総額を極小化することにより最適な在庫投資の規模を決定することができる。現実の在庫投資の変動は,短期の景気循環を鋭敏に反映し,景気循環の局面を在庫投資の変動の様相でとらえることが広く試みられている。

 国民経済全体としての投資の資金の源泉は原則として貯蓄である。したがって,国民経済全体としての貯蓄の大きさによって当期の投資の総額は決定される。つまり,総貯蓄は当期の資本財供給総量を決定し,それが当期の国民経済の総投資を決定することになる。この総投資を上記の意味から国内総資本形成と呼ぶ。国内総資本形成の内容は,投資主体の点からみると公共投資と民間投資から成り,投資の種類からみると設備投資,在庫投資,住宅投資から成っている。これらの各投資にそれぞれどれだけが配分されるかは,国家の経済政策,生産技術,国民の嗜好,将来期待などによる。そして,国民経済全体としてどれだけの総貯蓄が発生し,それが資本形成となってどのように配分されるか,さらに各産業間にどのように配分されるかは,資本形成の理論の課題である。
資本
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「投資」の意味・わかりやすい解説

投資
とうし
investment

資本ストックの増加分のこと。資本ストックは、(1)機械設備、工場設備、オフィス、(2)住宅、(3)在庫の三つから構成される。企業が財・サービスを生産するため、新たに機械を購入したり、工場や店舗を建てたりするのが設備投資である。新たに建築される住宅は住宅投資である。企業は将来の販売活動に備えて、原材料、仕掛(しかかり)品、製品の在庫を保有するが、この在庫の増加分が在庫投資である。このように資本ストックの種類に対応して、投資もまた設備投資、住宅投資、在庫投資の三つに分類される。

 投資は、消費とともに国内総生産(GDP)の重要な構成要素である。家計消費は日本のGDPの6割弱を占めるのに対し、民間と政府による投資は約2割とそのシェアは小さい。しかし、重要なのは、消費は安定的であるが、投資はかなり変動的な性格をもっているということである。この投資の変動性は、経済の活動水準を不安定なものにし、景気循環の原因となる。このため政府が総需要管理政策により経済の安定化を図る場合には、投資の決定要因を詳しく知ることがたいせつとなる。

[内島敏之・前田拓生 2016年3月18日]

粗投資(あらとうし)と純投資

企業がある一定期間内に新たに購入する資本ストックの全体を粗投資gross investmentという。粗投資のすべてがかならずしも資本ストックの純増につながるとはいえない。ある期間の期首に100の機械設備があり、そのままほうっておくと10の機械が摩滅するとしよう。その期の期末に100の機械を依然として据え付けておくためには、除去した10にかわる機械を新たに据え付けなければならない。この10の除去の穴埋めのための投資のことを更新投資あるいは減価償却という。いま40の粗投資をしたとすると、そのうちの10は機械を補う更新投資である。残りの30が新たに資本ストックを増やして生産能力を高めるのであり、これを純投資net investmentという。つまり、
  粗投資=純投資+更新投資
と示される。更新投資以上の粗投資がなされると純投資は正となり、経済の生産能力は高まる。粗投資のすべてが更新投資となるのであれば、純投資はゼロとなり、経済の生産能力は不変である。更新投資に必要な分以下の粗投資しかなされないと、純投資は負となり、経済の生産能力は減少し、経済活動は縮小することになる。

[内島敏之・前田拓生 2016年3月18日]

独立投資と誘発投資

投資には、景気のよしあしに敏感に反応してなされるものと、そうではないものとがある。前者のように短期的な需要の増加に誘発されて行われるのが誘発投資であり、これに対して短期的な需要動向に直接左右されることなく行われる投資を独立投資という。日本においては、高度成長期の設備投資は誘発投資型が中心であったが、1980年代に入ってからは、ハイテクを中心とする技術進歩が活発化し、このため加工組立型産業を中心としてハイテク関連投資が設備投資の盛り上がりをリードするようになった。このようなハイテク化設備投資は、研究開発投資と同様に、独立投資の代表的な例である。

[内島敏之・前田拓生 2016年3月18日]

投資と景気循環

景気循環の理論としては、技術革新に起因する約50年の周期をもつコンドラチェフの波(超長期循環)のほかに、投資に起因する次の三つの景気の波が有名である。第一は、在庫投資に起因するキッチンの波(在庫投資循環。キッチン循環ともいう)で、その周期は約40か月である。第二は、設備投資に起因するジュグラーの波(設備投資循環。ジュグラー循環ともいう)である。企業の設備の経済的寿命は約10年といわれ、このためジュグラーの波の周期は約10年である。第三は、住宅投資に起因するクズネッツの波(建築循環。クズネッツ循環ともいう)である。建物の寿命はおよそ20年であるので、その周期も約20年である。クズネッツの波はジュグラーの波を2回含み、ジュグラーの波はキッチンの波を3回含むのが通常である。これら三つの波の下降期が重なると、より大きな不況期が到来することになる。詳しくは「景気循環」の項目を参照されたい。

[内島敏之・前田拓生 2016年3月18日]

投資の二重効果

投資は経済成長を推進するエンジンである。日本の高度成長は、企業の活発な設備投資意欲により可能となった。投資が経済成長に果たす役割を説明するのが、投資の二重効果である。一つは投資の短期の効果としての「需要創出効果」である。投資はGDPの重要な構成要素であり、新たに機械が据え付けられたり、住宅・工場が建築されたりすると、総需要を増やす(投資の乗数理論)。いま一つは投資の長期の効果としての「生産能力創出効果」である。いったん据え付けられた機械が稼動すると、それは財やサービスを生産・供給する能力を増加させることになる。このような投資が経済の需要と供給の両サイドに及ぼす二つの効果に着目して経済成長の基本理論を組み立てたのが、R・F・ハロッドとE・D・ドーマーであり、この理論はハロッド‐ドーマーの成長理論(ハロッド‐ドーマー・モデル)とよばれる。

[内島敏之・前田拓生 2016年3月18日]

『中谷巌著『入門マクロ経済学』(1981・日本評論社)』『香西泰編『景気循環』(1984・教育社)』『鈴木正俊著『経済データの読み方』(岩波新書)』『朝日新聞経済部編『経済指標を読みこなす』(講談社現代新書)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「投資」の意味・わかりやすい解説

投資
とうし
investment

将来の収益増加の期待から生産能力を増加させること。また広義には収益を期待して資金を支出することもいう。投資の主体はおもに民間の企業である。投資は一国の経済全体のダイナミックな運動を引起す重要な要因である (→設備投資 ) 。投資は一般に (1) 商品への需要増加が見込まれる,(2) 賃金の上昇が,より労働節約的な生産方法の採用を有利にする,(3) 従来よりも効率の高い生産方法が発明され,あるいは新製品が開発された場合に行われる。単位期間における投資は資本形成と呼ばれる。また,既存の資本の価値の減耗に対する償却を含むものを粗投資,減価償却を含まず資本の純増となるものを純投資と呼ぶ。国民所得は大きく消費と投資に分けられる。消費がその期間内に費やされてしまうのに対し,投資は有効需要としての意味と,それが資本の増加となって将来の生産を増加させるという2つの性質をもっている。

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株式公開用語辞典 「投資」の解説

投資

有価証券に「投資」をするという意味に於いて一般的な見解によると、利子や配当などのインカムゲインの取得を目的とした資金や資本を投下する行為を言う。ただしこの概念はあくまでも抽象的なものであり、実際には「投機」との区別を明確にすることができないことが多い。

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世界大百科事典(旧版)内の投資の言及

【経営財務】より

…企業はその活動を行うために,さまざまの源泉のなかから資金を調達し,各種資産の購入のために資金を投下しなければならない。企業において,投資の意思決定およびそのために必要な資本調達の決定を行う機能を経営財務,あるいは財務管理financial management,企業財務・企業金融business financeという。現代においては,株式会社が中心的な企業形態であるので,単に経営財務というときには,株式会社財務corporate financeを指すことが多い。…

【景気循環】より

…そして,既存の工場内で生産者耐久施設の大きさを変動させるより,新しい工場を建設する場合のほうが,一度により多額の支出を行わなければならないであろう。そこで,機械関係の設備投資より,建設関係の投資のほうが一つの財として分割可能性が小さく,需要量の変動に対して,それだけ長い調整時間を必要とするであろう。つまり,需要量が増加し,生産能力の不足がみえはじめたとき,機械設備の増加によって既存の工場内での生産能力を増加させることは,新工場の建設によって生産能力を増加させることに比べて,より速やかに行われるであろうということである。…

【資本蓄積】より

…実物資本は,機械設備,建物,構築物,原料や製品の在庫からなる。これらの資本は,年々生産される生産物の一部が投資として蓄積されたものである。資本蓄積または資本形成capital formationとは,資本が年々増加することをいい,この資本の増加分を投資という。…

【消費】より

…一方,第2項の政府最終消費支出は,政府部門の行政や軍事等の経常的な財貨・サービスに関する消費需要を示している。式の右辺第3,第4項は,いわゆる投資に対応しており,民間,政府の投資活動の伴う財貨・サービスの需要である。右辺の第5,第6項は,海外経済主体との関係を示しており,輸入分をこの式で控除しているのは,先の消費需要や投資需要の中に海外からの輸入された財貨・サービスを含んでいることから,それを一括して除いて,一国経済の生産や分配の規模と整合させようとしたためである。…

【貯蓄】より

…すなわち,貯蓄を増大させるということはその時点で考えれば,財の消費を減らすということであるから,有効需要(有効需要の原理)を減らし,所得や雇用を減少させる可能性がある。これは今日の発達した経済では貯蓄する主体が将来の消費を増やすために投資を同時に行うという場合が少ないことに依存している。貯蓄は銀行預金の増加,あるいは株式,債券,その他の資産の購入に振り向けられる。…

※「投資」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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