投資信託(読み)とうししんたく

精選版 日本国語大辞典 「投資信託」の意味・読み・例文・類語

とうし‐しんたく【投資信託】

〘名〙 (「証券投資信託」の略) 証券会社が一般投資家から集めた資金を、専門機関有価証券分散投資し、その運用で得た利益を投資家が受けとる制度。株式投資信託公社債投資信託がある。投信。
※夢を失わず(1959‐60)〈源氏鶏太〉貧乏人「投資信託なら、だいたい、損はしないでしょう?」

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デジタル大辞泉 「投資信託」の意味・読み・例文・類語

とうし‐しんたく【投資信託】

一般投資家から集めた資金を、専門の機関が運用し、その運用成果を投資家に配分する制度。投資信託会社が設定した投資信託の商品は、証券会社・銀行などを通して販売される。投資信託会社は、集めた資金を信託銀行に信託し、その銀行に指示して金融・証券市場で運用させて得た利子・配当金・値上がり益などを投資家に分配する。証券投資信託。投信。
[補説]関連する項目
 投資家 証券会社 投資信託会社 信託銀行
 交付目論見書 請求目論見書 運用報告書
 基準価額 信託報酬 信託財産留保額
投資信託の種類
 公社債投資信託 株式投資信託
 オープン型投資信託 ユニット型投資信託
 分配型投資信託 無分配型投資信託
 MRF MMF ETF REIT J-REIT

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改訂新版 世界大百科事典 「投資信託」の意味・わかりやすい解説

投資信託 (とうししんたく)

不特定多数の投資家から集めた資金を,有価証券投資を専門とする者が株式や公社債に投資運用し,それにより得た収益を,出資金の割合に応じて各投資家に返還するということを基本的な仕組みとする制度である。投信と略称する。

投資家は,投資信託の受益証券を購入することによりその投資信託の出資者となり,収益の配分を受ける権利者(受益者)となる。投資信託への投資は株式や公社債への投資と同じく有価証券投資による利殖手段の一つであるが,投資信託では,株式や公社債への投資は専門家が行うため,一般の投資家は投資信託を通じ間接的に株式や公社債に投資することになる。このように投資信託は,一般投資家が小口の資金で株式や公社債などの有価証券投資を容易にできるようにするという特色がある。さらに小口の資金を数多く集める結果,最終的には資金は巨額となることから,有価証券投資に常時ついて回る〈危険〉を極力回避する投資手法が採られることも特色の一つである。つまり〈分散投資〉による危険回避であり,この分散投資は投資信託の基本原則といわれる。投資信託における分散投資には,証券別分散投資,産業別分散投資,企業別分散投資,時間別分散投資があり,さらに外国証券への投資も可能であることから,地域別分散投資もこれに加えられる。値上がりの期待もあるが値下がりのおそれもある株式投資の危険を,確定利付きの公社債への投資で補う。株式投資に際しては,各業種間の分散を図ると同時に同一業種内では企業別の分散投資を行う。また,ある株を買い付ける場合,一時に予定の株数の買付けを行わず,時間の間隔を開けて何回かに分けて買い,買付けコストの引下げを図るという時間分散の投資を行う。このように分散投資を行うことで,専門家にとっても難しい個別銘柄の選定や,投資タイミングの決定の誤りを最小限にとどめることが可能になる。これら各種の分散投資の方法は,小口の金額による投資ではまず不可能であり,巨額の投資資金のもとで初めて可能となるのである。ところで,投資信託は分散投資を基本とするため仮にある少数の銘柄が大きく値上がりすることがあっても,これらの株式に直接投資をする場合のような値上がりの効果は期待できない。〈一つの籠にたくさんの卵を盛るな〉という分散投資の効用をうたうことわざは,株が値上がりするときには逆の効果を生じることも意味する。危険分散を本旨とする投資信託と,個別銘柄へ直接投資することとの大きな相違であり,投資信託の特徴といえる。

日本の投資信託は,証券投資信託法(1951公布)という法律を根拠としている。この法律の定義によれば〈証券投資信託とは,信託財産を委託者の指図に基づいて……〉とあり,したがって投資信託は正確には〈証券投資信託〉ということになるが,一般的に〈投資信託〉で通用している。投資信託はその名が示すとおり,信託の一種であるため,財産の運用をする〈委託者〉と,運用の成果を受け取る〈受益者〉と,さらにその財産の保管・管理を行う〈受託者〉の3者がいる。証券投資信託法によれば,委託者は投資信託の〈委託会社〉であり,受託者は〈信託銀行(正確には,信託会社または信託業務を営む銀行)〉である。受益者は投資信託に投資する,不特定多数の一般投資家である。これら,投資信託を構成する機関の業務を簡単に記すと以下のようになる。投資信託委託会社(委託者)は,受託者に対する信託財産の運用指図(有価証券売買などの指図)のほか,投資信託約款(個々の投資信託の契約内容を記したもの)の作成およびこれに対する大蔵大臣の承認をとること,受益証券の発行・募集,運用成果である収益分配金・償還金の支払,運用報告書の作成および投資家への交付,保有株式の議決権の行使,指図等を行う。信託銀行(受託者)は,委託者からの指図に基づく有価証券の買付け,売却,議決権の行使等,信託財産の保管・管理を行う。ところで,投資信託委託会社が行う業務のうち,直接投資家と接する部分,すなわち,受益証券の募集,収益分配金・償還金の支払,運用報告書の投資家への交付等は証券会社あるいは投資信託販売会社が,投資信託委託会社に代わって行っており,投資信託運営のうえでの重要な機関の一つとなっている。投資信託運営の中心となる投資信託委託会社は,証券投資信託法による免許会社である。法律の定める免許基準の一つに,〈人的構成及び有価証券への投資の能力等に照らし……委託者としての業務を行うにつき十分な適格性を有する者であること〉という規定がある。これによって,投資信託委託会社には,証券投資に対する高度の知識,経験,能力が要求されていることがわかる。

小口の資金を集めて各種の証券に分散投資し,生じた利益を出資金に応じて配分するという現在のような仕組みをもつ投資信託は,1868年イギリスで設立された投資信託(フォーリン・アンド・コロニアル・ガバメント・トラスト)を起源とする説が通説となっている。日本においては,1951年6月に証券投資信託法が制定され,現在の投資信託の仕組みができあがった。それ以前にも投資信託類似のものはいくつか出現した。たとえば1937年の藤本ビルブローカー大和証券の前身)による藤本有価証券投資組合であり,また41年には野村証券により投資信託(信託法に基づく)が設定されている。前者は信託業法との抵触が問題となり数年で解散し,後者は45年の終戦時に同じく解散している。

 投資信託の種類という場合,いろいろな観点から分類できるが,投資対象によって株式に投資する株式投資信託(株式投信)と,公社債にのみ投資する公社債投資信託(公社債投信)に分けられる。近年は公社債投資信託の伸長が著しい。商品の多様化も進み,新しい金利商品として投資家の間に定着したものとして注目される。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「投資信託」の意味・わかりやすい解説

投資信託
とうししんたく
investment trust

大小さまざまな投資家の資金を集めて一つの基金とし、この基金を専門的な管理者が証券や不動産などに投資運用して利殖を図り、この結果得られた利益を出資口数に応じて投資家に配分するシステム。もちろん、損失が生じた場合はそれは投資家の負担となるのであって、一定の利益や元本を保証するものではない。しかし、損失発生のリスクを分散し、できるだけ安全を保持するため、その集められた巨額の資金力を利用して、多くの投資対象に分散投資が行われる。これが投資信託の仕組みであり、その投資目的はもっぱら利殖であって、株式発行会社の支配などではない。このような投資信託は、1860年代のイギリスで始められ、1920年代にはアメリカで飛躍的に発展した。日本にも第二次世界大戦前からそのはしりがみられたが、戦後の1951年(昭和26)に証券投資信託法が制定されたことにより、本格的発展をすることとなった。

[後藤 猛]

分類

一口に投資信託といってもいろいろの型がある。これを分類するには、まず、(1)契約型か会社型か、(2)クローズド・エンド型かオープン・エンド型か、という区分が重要である。

 (1)の分類は成立の方式にかかわるもので、まず、契約型投資信託は、委託者(信託財産の運用管理者)と受託者(信託財産の保管者)と受益者(投資家)の三当事者によって成立する。委託者は受託者と信託契約を結び、受託者は信託財産を委託者の指図どおりに証券投資をして運用するものとし、委託者はその受益権を均等に分割した受益証券にして発行し、それを多くの投資家(受益者)に売るわけである。これに対し会社型投資信託とは、投資を目的とする株式会社(投資法人)を設立し、その株式を投資家に売って基金を集め、証券などに投資して利殖を図り、利益を投資家に分配するものである。1860年代のイギリスの投資信託は契約型の原形を示すものであったが、その後、会社型も発展した。アメリカでは会社型が圧倒的に多い。これに対し日本の証券投資信託法は契約型のみを規定していたが、1998年(平成10)の法改正により、証券投資信託法は「証券投資信託及び証券投資法人に関する法律」となり、会社型投資信託の制度も導入された。また、2000年の法改正により「投資信託及び投資法人に関する法律」と改称された。

 次に(2)の分類は伸縮性の有無にかかわるもので、クローズド・エンド型投資信託は、発行証券(契約型の場合の受益証券、会社型の場合の株券)の買戻しとこれによる基金の減少が原則として行われないものであり、オープン・エンド型投資信託は、それがいつでも行われ、あるいは追加設定も行われうるものである。この場合の買戻しは基金の純資産価格から算出される「基準価額」に基づいて行われる。これに対し、クローズド・エンド型の換金は市場で売買することとなる。契約型の投資信託は原則としてオープン・エンド型である。しかし、会社型なら両方の型がありうる。ただし、オープン・エンド型でも、追加設定をしない方式のものはセミ・オープン方式といわれ、単位型あるいはユニット型とも称される。これに対し、追加設定のできる方式のものは追加型あるいはオープン型と称される。追加型は無期限が原則であるが、単位型は一定の信託期間があり満期には償還される。

[後藤 猛]

日本の投資信託

日本の投資信託は「投資信託及び投資法人に関する法律」によって運営されており、1998年の改正以降は契約型のほか、会社型も発行されている。契約型には単位型と追加型とがある。また、その運用対象証券を何に重点を置くかにより、株式投資信託と公社債投資信託に分かれるが、さらに、転換社債投資信託、公共債株式ファンド、資産株ファンド、バランス型ファンドなど、いろいろの組合せのものがあり、さらに、外国株専門に投資する外国株投資信託、国内株と外国株とへ分散投資をねらいとする国際投資信託などもある。また、公社債投資信託のなかには、長期の公社債を組み入れる長期公社債投資信託のほか、中期国債と中短期債を主要対象とする中期国債ファンド、短期債や金融商品などを組入れ対象とし、1円単位でいつでも出し入れ自由のMMF(マネー・マネジメント・ファンド)などがある。また、2000年の法律改正により、オフィスビルや商業施設、マンションなどの不動産に投資する不動産投資信託も出現した。これは会社型投資信託で投資法人によって運用されている。不動産投資信託はJリート(J‐REIT)と略称され、証券取引所にも上場されている。2007年末現在の株式投資信託の設定残高は66兆7000億円、公社債投資信託は12兆9000億円、そのうちの2兆9000億円はMMFであった。これら投資信託を設定運用する投資信託委託会社は、証券会社系のほかに、銀行系、投資顧問会社系、保険系などが、国内、海外から新規参入して急増し、2007年5月末現在で79社となっている。このほか、不動産投資信託の運用会社は46社ある。またその受益証券の販売は、1998年12月に施行された金融システム改革法によって、証券会社以外の金融機関にも認められたことにより、販売に参入する会社が急増している。

[後藤 猛]

『社団法人投資信託協会編・刊『不動産投資法人ガイド』『わかりやすい投資信託ガイド』(2007、2008)』

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百科事典マイペディア 「投資信託」の意味・わかりやすい解説

投資信託【とうししんたく】

多数の投資家から集めた資金を,専門的運用経験をもつ管理者が証券を中心に分散投資することにより,その利益を投資家に分配する制度。安全かつ有利な利益の分配を受けようとする投資対象であるが,投資した元金の保証はなく,損になる可能性もある。資金の運用には投資信託委託会社が当たり,その指図を受けて信託銀行が管理・処分を行い,また募集・販売・支払は証券会社が行うのが従来のシステムであるが,1990年代に自由化が進んだ。投資信託は,その運用対象によって公社債投資信託と株式投資信託に分かれ,また募集形態によってオープン型投資信託ユニット型投資信託に分類される。1993年から,銀行や生保,損保でも子会社の投資顧問会社を通じての参入が可能になり,1998年12月には子会社経由ではなく,それぞれの会社本体による参入が解禁され(銀行窓口でも販売),さらに会社型投資信託(株式会社が信託財産を保有し,投資家はその会社の株式を購入して株主になる)や私募投資信託(50人未満の投資家にしぼって販売)という新型の投信も導入された。→証券投資信託
→関連項目MMF機関投資家金銭信託投資顧問業ヘッジファンドラップ口座

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ASCII.jpデジタル用語辞典 「投資信託」の解説

投資信託

金融商品の一種。一般の投資家から比較的小口の資金を集めた上で、それを国内外の有価証券、金融商品に投資し、得られた利益を投資家に還元する形態の商品である。当事者は三つに大分される。投資家=「受益者」、投資家の資産を管理する信託銀行=「受諾者」、運用の指示を行なう運用会社=「委託者」である。そして投資で得られた利益は契約に基づいて投資家、信託銀行、運用会社の三者で分配される。元本が保証されないリスク商品であるため従来は証券会社に取り扱いが限られていたが金融ビックバン後に規制が急速に緩和され、現在では銀行、保険会社、郵便局なども独自の商品を販売するようになった。

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知恵蔵 「投資信託」の解説

投資信託

多数の投資家から委託された資金を運用し、収益を投資家に還元する仕組み。日本では契約型のユニット・トラストが中心であったが、1998年から会社型(投資会社が株式を発行し、投資家が株主となる形式)も導入された。英国のインベストメント・トラストや米国のミューチュアル・トラストは会社型が中心。また、日本では公社債型を除く投信の97%までが、あらかじめ決められた信託財産の範囲で随時買付けと売却が自由な追加型(オープン型)。2007年12月末の投資信託運用残高は119兆5859億円。

(熊井泰明 証券アナリスト / 2008年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「投資信託」の意味・わかりやすい解説

投資信託
とうししんたく

証券投資信託」のページをご覧ください。

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世界大百科事典(旧版)内の投資信託の言及

【信託】より

…個人信託業務は遺産の処理と財産の利殖および年金信託が中心である。法人信託業務は公社債,投資信託,動産設備信託等の信託業務と株式の登録や名義書換えなどの代理業務から成るが,中心は公社債関係業務と証券代行業務(株式の名義書換代理人業務)である。ほかに公益信託も扱っているが,公益信託はイギリスにおいても盛んである。…

※「投資信託」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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