労働法上は、労働争議に際し、労働委員会の会長の指名する斡旋員が労使の間に立って双方の主張の要点を確かめ、紛争の解決の方向に歩み寄るよう助言その他の援助活動をすることをいう。斡旋員は労働委員会があらかじめ作成しておいた斡旋員候補者名簿のなかから指名される。斡旋員候補者は学識経験者で、労使紛争の解決に適切な助言のできる者でなければならない。争議調整の方法には、斡旋のほかに調停、仲裁がある。これらのなかで斡旋はもっとも簡単な手続であり、労使双方の申請があればもちろん、労使の一方の申請または労働委員会の会長の職権によっても開始される。また、独自の解決案を提示する必要もない。ただし、実際には斡旋案の提示がなされる場合が多い。この諾否は任意である。斡旋の仕方は斡旋員の自由にまかされているが、不当な介入は抑制し自主的な争議の解決を追求することが手続のねらいである。斡旋手続は調停、仲裁とともに労働関係調整法(行政執行法人の労使紛争の場合は、行政執行法人の労働関係に関する法律)で規定されている。
公法上では、公害紛争処理法に基づき、公害にかかわる紛争の場合に、当事者は公害調整委員会または都道府県公害審査会または都道府県連合公害審査会に対し斡旋を申請することができる。また、土地収用法に基づき、道路その他公共事業に必要な土地等の取得につき、当事者の合意が成立しないとき、都道府県知事に申請して斡旋委員による斡旋を受けることができる。さらに、消費者基本法に基づき、地方公共団体は、事業者と消費者との間に生じた苦情が適切かつ迅速に処理されるようにするため、苦情の処理の斡旋等に努めなければならない。
[吉田美喜夫]
労働関係調整法(10~16条)などによる最も簡便な労働争議調整方法。労使間に発生する労働争議は自主的な解決が原則で理想であるが,これが困難な場合に,第三者たる公的機関が争議解決への助力をすることも有益である。斡旋は,関係当事者の双方か一方かの申請がある場合,または,労働委員会の会長が職権でその必要を認める場合に開始され,労働委員会の会長が指名する斡旋員の経験,識見,手腕により,争議状態を解決に向かわせるものである。斡旋員は,労使双方の主張の争点を確かめ,対立点の調整に助力を与える。調停や仲裁とは違って,斡旋員自ら斡旋案を提出する必要はないが,実際には斡旋案を提示することも多い。斡旋は自主的解決のための助力であるので,関係当事者への干渉となってはならない。また当事者は斡旋員の見解に法的に拘束されるものではない。斡旋員の努力をもってしても紛争解決の見込みがつかなければ,斡旋員は事件から手を引き,事件の要点を労働委員会に報告する。現在,斡旋は労働委員会による争議調整方法の主役として最も多く利用され,紛争解決のために有効な方法だと評価されている。
→労働争議調整制度
執筆者:諏訪 康雄
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… 労働委員会による各種調整手続は,本法2章~4章の2が規定する。通常の調整手続としては,斡旋(2章),調停(3章),仲裁(4章)の3種類の方法がある。斡旋は最も融通のきく柔軟でダイナミックな調整方法であり,現在,これら3種の公的調整のうちでいちばん利用され,実に労働委員会の調整による争議解決の9割以上が斡旋方式によっている。…
… 集団的労働争議を解決するための国家的制度としては,個別的なそれの場合と同じく,通常・特別の裁判所という司法機関および通常・特別の行政機関による調整制度がある。日本では,たとえば労働時間をめぐっての紛争を例にとると,労働協約に規定された労働時間に基づく各種の請求を通常裁判所が判断したり,労働基準法違反に対して労働基準監督署が是正勧告・命令をだしたり,あるいは,不当労働行為の救済や斡旋,調停,仲裁の措置を労働委員会がとるなどの方法が考えられる(このほか,都道府県の労政担当部課,労働事務所などによる事実上の調整活動もある)。私的制度としては,労働協約による調停・仲裁制度などがあるが日本でほとんど発達をみていないことは,個別的紛争をめぐる私的調整制度の場合と同じである。…
※「斡旋」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
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