検視(読み)ケンシ

デジタル大辞泉 「検視」の意味・読み・例文・類語

けん‐し【検視】

[名](スル)
事実を明らかにするために、事件現場などをくわしく調査すること。「犯行現場を検視する」
検察官などが、変死者または変死の疑いのある死体について、その死亡犯罪によるものかどうかを調べること。

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共同通信ニュース用語解説 「検視」の解説

検視

刑事訴訟法に基づき、犯罪死可能性がある変死体の状況を調査し、事件性の有無を判断する。警察官の中でも、警察大学校法医学を修了した警部以上の階級の検視官が行うのが望ましいとされる。検視後、必要に応じ司法解剖をして詳しく調べる。2005年の全国の検視官は136人、検視官が現場に赴く臨場率は平均11・8%だったが、14年には333人に増え、臨場率も初めて7割を超えた。

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精選版 日本国語大辞典 「検視」の意味・読み・例文・類語

けん‐し【検視・撿視】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 事実をよく調べること。事実の取り調べをすること。また、その人。
    1. [初出の実例]「かかる字は何れの門にあるべしと其所を検視して」(出典:授業編(1783)七)
    2. [その他の文献]〔後漢書‐杜根伝〕
  3. 特に、変死者または変死の疑いのある死体について、その死亡が犯罪によるものかどうか調べること。検死。検屍。
    1. [初出の実例]「かさなって居るでけんしのにが笑ひ」(出典:雑俳・柳多留‐三(1768))

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「検視」の意味・わかりやすい解説

検視
けんし

変死者または変死の疑いのある死体があるときに、犯罪の嫌疑の有無を確認するために、検察官が視覚嗅覚(きゅうかく)など五官の作用をもって、死体の状況を見分する処分のこと。五官の作用をもってする見分に限られるから、鑑定処分として行われる死体解剖とは区別される。検視は、犯罪捜査の端緒の一つとなる。変死者または変死の疑いのある死体があるときは、その所在地を管轄する地方検察庁または区検察庁の検察官は、検視をしなければならない。検察官は、検察事務官または司法警察員にこの処分を代行させることができる(刑事訴訟法229条)。これを代行検視という。検視を実施する場合には、医師の立会いを求めてこれを行い、速やかに検察官にその結果を報告するとともに、検視調書を作成して、撮影した写真等とともに送付しなければならない(検視規則5条)。検視を経ないで変死者を葬ると変死者密葬罪に問われる(刑法192条)。検視にあたっては、(1)変死体の氏名、年齢、住居および性別、(2)変死体の位置、姿勢ならびに創傷その他の変異および特徴、(3)着衣、携帯品および遺留品、(4)周囲の地形および事物の状況、(5)死亡の推定年月日時および場所、(6)死因(とくに犯罪行為に起因するか否か)、(7)凶器その他犯罪行為に供した疑いのある物件、(8)自殺の疑いがある死体については、自殺の原因および方法、教唆者、幇助(ほうじょ)者等の有無、ならびに遺書があるときはその真偽、(9)中毒死の疑いがあるときは、症状、毒物の種類および中毒するに至った経緯を調査しなければならない(検視規則6条1項)。以上の司法検視に対して、死亡が犯罪に起因するものでないことが明らかである死体を検分する場合は、行政検視とよばれ、この場合は死体取扱規則による。なお、臓器移植との関係では、医師が死体から臓器を摘出しようとする場合において、当該死体について検視が行われるときは、その手続が終了した後でなければ臓器の摘出はできないこととなっている(臓器の移植に関する法律7条)。

[内田一郎・田口守一]

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普及版 字通 「検視」の読み・字形・画数・意味

【検視】けんし

あらため視る。〔後漢書、杜根伝〕根~直諫す。太后大いに怒り、根等を收執し、るに(けんなう)を以てせしめ、殿上に之れを撲す。~にして載せて外に出だす。~人をして檢せしむ。根、に詐りて死すること三日、目中に蛆を生ず。

字通「検」の項目を見る

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百科事典マイペディア 「検視」の意味・わかりやすい解説

検視【けんし】

変死者または変死の疑いのある死体につき,死因が犯罪によるものかどうか,および死体の身元確認を目的とした死体の外表検査。検察官(または検察事務官・司法警察員)は,変死者または変死の疑いのある死体があるときは,検視をしなければならない(刑事訴訟法229条)。必要とあれば裁判官の許可を得て鑑定人による解剖を行わせることができる(司法解剖)。監察医の制度がしかれている地域では,必ず監察医による検死・解剖が行われる(行政解剖)。この司法検視のほか,変死の疑いのない死体・死胎につき,戸籍法等に基づいて死体の保存現場で警察官等が行う行政検視がある。その結果は検視調書等に記録される。医師には死体を検案して異状があるときには届出の義務があり,検視を経ずに変死者を葬った者は処罰される(刑法192条)。

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世界大百科事典(旧版)内の検視の言及

【異常死体】より

…いわゆる法定伝染病などによる死亡は,異常死体には含まれないが,公衆衛生上の見地から,診断や検案の時点で,医師に保健所への届出の義務を課している。異常死体に対しては,届出にもとづき警察の調査(検視)が行われる。この際,原則として医師が立ち会い,死体外表の検査(検死)を行う。…

【検死】より

…監察医は検死によって死因を明らかにしえない場合には解剖(行政解剖)することができるが,その他の地域ではほとんど解剖されないので,かなりの誤診があるものと推定されている。なお,刑事訴訟法229条には〈変死者又は変死の疑のある死体があるときは,その所在地を管轄する地方検察庁又は区検察庁の検察官は,検視しなければならない〉と規定されている。変死(体)とは犯罪に関係する死体か否かが明らかでない死体という意味であり,鑑定のための解剖(司法解剖。…

※「検視」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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