デジタル大辞泉 「目安」の意味・読み・例文・類語
め‐やす【目安】
2 そろばんの掛け算や割り算で、そろばん上の左のほうに置く乗数または除数。
3 そろばんで、
4 箇条書きにした文書。中世では、箇条を立てて書いた訴状と陳状。江戸時代ではもっぱら訴状のことをいう。目安書き。目安状。
[類語](1)見通し・見当・読み・見込み・見極め・当て・
中・近世における訴状の一種もしくは別称。〈目安〉とは目を安んずる,つまり読者にわかりやすい,という意味で,最初に〈目安〉〈目安言上〉などと書き出し,本文は〈一,……事〉という事書形式にし,最後に〈目安言上如件〉などと書き止める形式をとった。鎌倉時代後期から目安状の形をとる訴状が増加し,しだいに通常の訴状と混合し,やがては本文が事書形式でないものにも〈目安言上〉などの文言が用いられ,訴状の別称として用いられるに至る。ただし発生期の目安状と一般の訴状のちがいが,単にこうした形態的な相違だけであるかどうかは疑問の余地が大きく,提出される法廷や訴訟対象の差異,さらに訴訟手続上の段階の差などによって使いわけられた可能性がある。なお目安は裁判のみでなく,軍忠状など他の上申文書としても用いられた。
執筆者:笠松 宏至
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
文書の一分類。「目を安んずる」意からでた語とされる。本来,要点を箇条書にするなどして文書をわかりやすくすることを「目安に書く」といい,そのようなかたちをとる文書,とくに訴陳状(そちんじょう)などの申状の類を目安状とよんだ。さらに,箇条書でなくても,要点を記した訴陳状一般をさすようになり,やがて訴陳状,とくに訴状をさすようになった。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
…出入筋は原告(訴人)が他領他支配の者を被告(相手方)とする場合は原則として江戸の評定所に出訴しなければならない(支配違え懸る出入)。訴状(目安)には名主の印を要し,また支配違の場合は大名領については添使(そえづかい),旗本領については添簡(そえぶみ)が必要で,江戸において留守居(るすい)等の役人が付き添って裁判所に出頭した。訴状はまず法曹役人が書式,請求の実態を慎重に検討して修正を命じ,あるいは不受理とする(〈目安糺(ただし)〉)。…
…ただし,債権法,取引法と密接にかかわる金公事(金銀出入)については大坂町奉行所に広範な裁判管轄権が与えられており,江戸とは異なる債権保護的性格の強い法制を発達させたことが注目される。出入筋はまた〈目安懸(めやすがかり)〉ともいい,私人ないしそれに準ずる団体が訴状(目安)を裁判所に提出することによって開始されるもので,法廷(白洲(しらす))で原告(訴訟人,願人),被告(相手方)を対決させて判決を与える手続である。 裁判所はまず,訴訟人の提出した目安を審理し,訴を受理することの可否,受理する場合は本公事・金公事の別を決定する。…
…江戸幕府の民事裁判手続(出入筋(でいりすじ))における被告(相手方)の答弁書。訴状(目安(めやす))に裁判所の裏書(目安裏書,目安裏判(うらはん))が与えられ,これが原告(訴訟人)の手によって相手方のもとに送達されると,相手方は目安の内容に対する反駁を書面に記して裁判所に提出しなければならない。この書面が返答書で,通常は〈差日(さしび)以前着届(ちやくとどけ)〉(出廷期日の前に出府,到着した旨の届出)の際に目安とともに提出する。…
※「目安」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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