『日本後紀』に続く勅撰(ちょくせん)の歴史書。20巻。「六国史(りっこくし)」の4番目。833年(天長10)の仁明(にんみょう)天皇の即位より850年(嘉祥3)の仁明の死去と葬儀に至る18年の歴史を記す。855年(斉衡2)文徳(もんとく)天皇の命により藤原良房(よしふさ)、藤原良相(よしみ)、伴善男(とものよしお)、春澄善縄(はるずみのよしただ)、県犬養貞守(あがたいぬかいのさだもり)の5人が編集にあたり、清和(せいわ)天皇の869年(貞観11)に完成・奏上した。この間、良相は病死、善男は応天門(おうてんもん)の変によって伊豆に流され、貞守は駿河守(するがのかみ)となって赴任したため、残った良房、善縄によって奏上された。これまでの国史は数代から数十代の天皇の時代のことを扱っているのに対し、本書は仁明天皇一代を対象とする点が特色で、記事も詳しい。古写本には1136年(保延2)の写本を影写した高柳光寿(みつとし)旧蔵本があり、巻5、巻8の2巻が現存する。そのほかに室町時代書写の三条西(さんじょうにし)家本系統の写本があるが、錯簡、脱文、省略が多い。『国史大系』所収。
[直木孝次郎]
『坂本太郎著『六国史』(1970・吉川弘文館)』
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日本古代の史書。六国史の第4。20巻。仁明天皇1代,833年(天長10)から850年(嘉祥3)にいたる18年間の歴史を記す。文徳天皇の命により,藤原良房,春澄善縄らが編纂にあたり,清和天皇の869年(貞観11)に完成奏上。以前の国史の体裁を追いながらも,天皇1代の実録としての性格を強めており,記事詳密,体裁も整備されている。ただし現存の写本には錯簡,脱文,省略等が多い。《新訂増補国史大系》所収。
執筆者:笹山 晴生
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六国史(りっこくし)の一つで,「日本後紀」に続く4番目の勅撰の正史。20巻。869年(貞観11)藤原良房・春澄善縄(はるずみのよしただ)らにより完成奏上された。淳和天皇の833年(天長10)から仁明天皇の850年(嘉祥3)までを漢文編年体で記す。承和の変がおこり,皇太子恒貞(つねさだ)親王が退けられ,道康(みちやす)親王(文徳天皇)が立太子するなど,藤原北家が摂関家として権力を獲得していく過程が記されている。先行の3正史と比べて,本書の記事は広範かつ詳細であるが,伝来の過程で脱漏や錯簡が生じている。「新訂増補国史大系」所収。
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