緊急逮捕(読み)キンキュウタイホ

デジタル大辞泉 「緊急逮捕」の意味・読み・例文・類語

きんきゅう‐たいほ〔キンキフ‐〕【緊急逮捕】

逮捕状なしで被疑者逮捕すること。死刑無期または3年以上の懲役禁錮にあたる罪を犯した疑いが十分にあり、かつ急を要する場合にのみ認められる。逮捕後、直ちに裁判官に逮捕状の発行を求めなければならない。

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精選版 日本国語大辞典 「緊急逮捕」の意味・読み・例文・類語

きんきゅう‐たいほキンキフ‥【緊急逮捕】

  1. 〘 名詞 〙 死刑、無期、三年以上の懲役または禁固にあたる罪を犯したと疑うに足りる十分な理由があり、しかも急を要するため逮捕状を請求している時間のない場合に、その理由を告げて被疑者を逮捕すること。ただしそのあとですぐ裁判官に逮捕状を請求しなくてはならず、もし逮捕状が発せられないときはすぐに釈放しなければならないことになっている。

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改訂新版 世界大百科事典 「緊急逮捕」の意味・わかりやすい解説

緊急逮捕 (きんきゅうたいほ)

緊急の必要があるが逮捕状を求める余裕のない場合に,事前に逮捕状をえずに行われる逮捕。死刑,無期または刑期の最大限が3年以上の懲役,禁錮にあたる事件について,嫌疑が十分であり,急速を要し逮捕状を求めることができないときに,その理由を告げて行うことができる(刑事訴訟法210条)。逮捕の直後に裁判官の逮捕状を求める手続をしなければならず,もし逮捕状が発せられなければ,すぐ釈放しなければならない。職務質問任意での取調べの結果嫌疑が明らかになった場合などに行われることが多く,逮捕全体の約18%を占める(1980年。交通に関する業務上過失致死傷を除く刑法犯)。裁判官が令状申請を却下したのは約0.13%である(同年。全事件)。緊急逮捕は,新憲法立案当時政府は検察官なども憲法33条の〈司法官憲〉として令状を出せるとしていたところ,のちに裁判官しか令状は出せないとみられるに至ったため,とくに設けられた制度である。しかし,憲法33条は,現行犯以外は令状により逮捕すべきものとしているため(〈令状主義〉の項参照),その合憲性は問題である。実際の必要,立法経緯,直後に令状が出ること,外国でも直後の裁判官によるチェック条件に令状なしの逮捕を認める例が多いことなどを理由にこれを合憲とする意見が強いが,厳密な理由づけはむずかしい。最高裁判所判例も合憲とするが,詳しい理由は示していない。いずれにせよ変則的な制度であるので,厳正な運用が必要である。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「緊急逮捕」の意味・わかりやすい解説

緊急逮捕
きんきゅうたいほ

検察官、検察事務官または司法警察職員は、死刑または無期もしくは長期3年以上の懲役もしくは禁錮にあたる罪を犯したことを疑うに足りる十分な理由がある場合で、急速を要し、裁判官の逮捕状を求められないときは、その理由を告げて被疑者を逮捕することができる(刑事訴訟法210条)。これを緊急逮捕という。この場合には、ただちに裁判官の逮捕状を求める手続をする必要があり、逮捕状が発せられないときは、ただちに被疑者を釈放しなければならない。逮捕後、ただちに逮捕状を求める手続をとらなかった場合には、その逮捕は違法となり、その間に得られた被疑者の供述は証拠能力がないことになる(判例)。緊急逮捕の合憲性については学説上争いがある。憲法第33条は、逮捕状による逮捕を原則とし、例外として令状なくして逮捕することができるのは現行犯逮捕の場合だけであると規定しているので、緊急逮捕は憲法に反するとする説もある。しかし、憲法第33条は、司法的抑制を働かせなくても逮捕が合理的である場合として現行犯逮捕を掲げていると解することができ、これに準ずる合理性がある場合にも例外を認めることができると考えられるので、憲法に反するものではないといえよう。判例も、緊急逮捕を合憲としている。

[内田一郎・田口守一]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「緊急逮捕」の意味・わかりやすい解説

緊急逮捕
きんきゅうたいほ

令状なくして行う逮捕の一つ。検察官,検察事務官または司法警察職員が,死刑または無期もしくは長期3年以上の懲役もしくは禁錮にあたる罪を犯したと疑うに足りる十分な理由がある場合で,急速を要し,裁判官の逮捕状を求めることができない場合には,その理由を告げて被疑者を逮捕することができるが,その後ただちに裁判官の逮捕状を求め,これが発せられないときはただちに被疑者を釈放しなければならないという制度である (刑事訴訟法 210条1項) 。憲法 33条は明示的には現行犯逮捕と令状逮捕のみを認めているにすぎないため,その合憲性が問題となり,違憲説も有力であるが,通説である合憲説は,一種の令状逮捕説 (逮捕に接着した時期に逮捕状が発せられる) ,一種の現行犯説,緊急行為説 (緊急の場合に重大な社会秩序の侵害を排除する行為) などに分れている。最高裁判所の判例はこれを合憲としている。

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百科事典マイペディア 「緊急逮捕」の意味・わかりやすい解説

緊急逮捕【きんきゅうたいほ】

死刑または無期もしくは長期3年以上の懲役・禁錮に当たる罪を犯したことを疑うに足りる十分な理由がある場合で,急速を要し,裁判官の逮捕状を求めることができない場合に,その理由を告げて被疑者を逮捕すること(刑事訴訟法210条)。事後直ちに裁判官に逮捕状を請求して,それを得られなければ,逮捕者を直ちに釈放しなければならない。違憲の疑いもあるが,最高裁は1955年合憲判断を下している。→逮捕
→関連項目強制捜査

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世界大百科事典(旧版)内の緊急逮捕の言及

【逮捕】より

… 狭義では,刑事訴訟法上の術語として,公訴提起前に被疑者の身体を一時的に拘束することを逮捕という。刑事訴訟法上の逮捕には,通常逮捕(刑事訴訟法199条以下),現行犯逮捕(212条以下),緊急逮捕(210条,211条)の3種類がある。通常逮捕は,捜査機関が,その請求により裁判官があらかじめ発した逮捕状により,被疑者を逮捕するものである。…

※「緊急逮捕」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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