誓文払い(読み)セイモンバライ

デジタル大辞泉 「誓文払い」の意味・読み・例文・類語

せいもん‐ばらい〔‐ばらひ〕【誓文払い】

10月20日に、京都四条寺町の誓文返しの神、官者殿かじゃでん(冠者殿)に商人遊女が参詣し、商売上やむをえずついたうその罪を払い、神罰を免れるように祈る風習。京阪地方ではこの日を含めた数日間、大売り出しが行われる。 秋》

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改訂新版 世界大百科事典 「誓文払い」の意味・わかりやすい解説

誓文払い (せいもんばらい)

商店で在庫品その他を格安に売り出すこと。本来は江戸時代,陰暦10月20日に京都の商人や遊女が四条京極にある官者殿(冠者殿)(かんじやでん)に参詣し,一年中商売のかけひきにうそをいった罪をはらい,神罰を免れるように祈ることをいった。官者殿は祇園社の末社で,〈誓文返しの神〉とされていた。のち転じて,商家がふだんおかしがちな虚言を恥じてたてた1日ということになり,罪滅ぼしの精進日とし,内では福の神として蛭子(えびす)をあがめ,店頭では良品,端物を格安にひさぎ,神罰,仏罰の許されんことをひとえに願った。この売出しを誓文払いまたは恵比須(えびす)講とよぶようになった。この売出しはおもに関西地方のならわしで,もとは多くは呉服店で蛭子切れを販売したのに由来するが,後には他の品種にもおよび,単なる売出日となった。また10月20日に限らずしだいに日数をまし,20日から3日間となり,さらに大正年代になって百貨店,商店街の盛んな販売政策から,16日から向こう1週間となった。ただし時期は地方により一定していない。
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百科事典マイペディア 「誓文払い」の意味・わかりやすい解説

誓文払い【せいもんばらい】

商店の特売行事。江戸時代,旧暦10月20日に京都の商人や遊女が四条京極の官者殿(かじゃでん)に参詣し,1年間商売上嘘(うそ)をついた罪を払う風習のことをいった。のち転じて商家がふだんの虚言を恥じて品物を格安に売り出すことを誓文払い,夷(えびす)講と呼ぶようになり,関西に限らず各地で行われるようになった。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「誓文払い」の意味・わかりやすい解説

誓文払い
せいもんばらい

陰暦 10月 20日の戎講 (えびすこう) の日に,京都の商人や遊女が四条京極の官 (冠) 者殿に参詣し,商売上の駆引きで客を欺いた罪を払い神罰を免れるように祈った行事。江戸時代以来の風習で,この日,京都,大坂の商店が安売りを行なったところから,のちには商店の売出し行事となり,京坂だけでなく全国に広がった。現在では日数も1週間程度に延長されており,時期も地方によりまちまちである。

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世界大百科事典(旧版)内の誓文払いの言及

【噓】より

…お伽衆や咄者の系譜を引くものと思われ,現在でもその家筋には優れた昔語りの話者がみられる。関西地方では10月20日の夷講を誓文(せいもん)払いといって,1年間に商売上でついたうその罪滅ぼしに商店では大売出しや得意先の接待を行う。また12月8日を噓つき払い,噓はらし,八日待,無実講といって,こんにゃくや豆腐を食べ1年間のうそを払う風習も西日本に多く見られる。…

【夷講】より

…えびす神をまつる年中行事。1月20日,10月20日の2回を祝う場合や,1月10日,12月8日といった日取りの地方もある。えびすは七福神の中心となる神として福徳を授けてくれるものとされ,各家庭では左膳に魚を添え,お金を升に入れて供えたりする。2回祝う所では,春に稼ぎに出かけ,秋には戻ってくるので,春は朝祝い,秋は夜祝いをするなどとも伝えている。また,12月8日を百姓えびす,10月20日を商人えびすという土地もある。…

※「誓文払い」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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