民間だけでは資金調達が難しい大規模プロジェクトや、政策的に必要な事業に政府が出資や融資をする仕組み。国債の一種である「財投債」の発行などで調達した資金を使い、政府系金融機関や独立行政法人を通じて貸し出しなどをする。鉄道建設や災害後の復興支援、中小企業の振興などに活用されている。
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資金運用部資金(現財政融資資金)などの有償資金を中心とした政府の投融資活動をいう。毎年度、財政投融資計画として取りまとめられ、予算と同時に国会に提出される。財産投融資計画には、産業投資特別会計の出資、資金運用部資金、簡保資金の運用および政府保証債・政府保証借入金のうちの、いずれも5年以上にわたる長期の投融資が計上されている。
[藤野次雄]
財政投融資の原資として、その中核をなしているのは資金運用部資金であり、しかもその過半は郵便貯金が占め、そのほかの厚生年金、国民年金などの各種の特別会計の積立金や余裕金などの資金を含めて統合管理されている。簡保資金は、簡易生命保険及郵便年金特別会計の積立金から独自の還元融資の原則により運用された部分の残りを財政投融資の原資としている。産業投資特別会計は、収益力が低く、リスクが大きい事業に、その危険負担を軽減するために出資することを目的に設立されたもので、出資に対する配当金の性格をもつ国庫納付金および既貸付金の回収金などの運用金収入のほか、一般会計からの繰入金を原資としている(ただし、財政事情が厳しいため、1981年度以降は一般会計からの繰入れは行われていない)。政府保証債および政府保証借入金は、政府関係機関などが民間資金を調達してその事業資金にあてる場合、その信用力を高め、資金調達を容易にするために、政府がその元利払いを保証しているもので、政府資金そのものとはいえないが、国の財政と深い関係をもつ資金という性格にかんがみ、財政投融資の原資として扱われている。なお、2001年(平成13)から、資金運用部資金は財政融資資金と名称を変え、さらに資金運用部資金の大半を占めていた郵便貯金、年金積立金、簡易生命保険が、自主運用となった。従来の資金運用部にかわるものとしては財政融資資金特別会計が設置された。
[藤野次雄]
財政投融資の運用対象は、財政投融資計画に計上されている特別会計、公社、公庫等、公団等、特殊会社等、地方公共団体と、資金運用部資金による国債引受けである。
財政投融資の原資は、前述のように、その大部分が有償の資金である。この資金は金融的に調達されるため、その運用対象は、元利の償還が確実な、十分な収益性のある事業であることが要請される。また、財政投融資の原資は、国の組織・制度を通じて集まってくる公共性の高い資金であるから、公共の利益に沿って運用されなければならない。つまり、政策的緊要度が高く、民間の経済活動を補完する分野(市場機構が働きにくい分野)に限って運用を行う必要がある。
[藤野次雄]
財政投融資のおもな機能として、景気調整機能と資源配分機能とがある。
景気調整機能は、財政がもつ重要な役割の一つであるが、財政投融資は一般会計と比べて景気調整機能を働かせやすい。それは、(1)一般会計が当然増や義務的経費を相当含むのに対して、財政投融資は事業費が大部分であること、(2)一般会計は補正の手続が必要であるのに対して、財政投融資には弾力条項があること、(3)財政投融資には繰越しの制度があること、など機動性・弾力性に富んでいるからである。
資本主義経済では市場機構によって資源の最適配分が行われているが、市場機構にゆだねておいたのでは社会的に望ましくない場合もあり、財政投融資もこれを是正する資源配分機能を担っている。しかし、財政投融資の場合には有償資金としての金融的限界があり、財政投融資を通じる資金供給は、すべて出資または融資という金融的形態をとる。独立行政法人都市再生機構(2004年7月、都市基盤整備公団と地域振興整備公団の地方都市開発整備部門が統合)などの投資機関に対する財政投融資は、直接公的部門に資源を配分し、日本政策金融公庫(2008年10月、国民生活金融公庫、中小企業金融公庫などが統合して設立された特殊会社)や沖縄振興開発金融公庫などの融資機関に対する財政投融資は、これら金融機関から貸付が行われることによって民間部門の中小企業、農林漁業、住宅建築の分野に資源を間接的に配分する。このような政策金融は個別の融資活動を通じて民間経済を誘導しようとするものであり、民間金融活動にゆだねることができない補完金融が期待されている。最近は、財政投融資のなかでも投資分より融資分の構成比が高まっており、融資についても量的補完から質的補完に重点が移行している。
[藤野次雄]
財政資金による投融資は第二次世界大戦前からみられたが、財政投融資計画としてまとめられ、予算とともに国会に提出されるようになったのは1953年度(昭和28)からである(この計画自体は国会の議決の対象とはならないが、1973年度以降、資金運用部資金および簡保資金の長期の運用については議決の対象とされるようになった)。それ以来、財政投融資の規模は年々増大し、一般会計のなかば近くにも及ぶようになり、資源配分機能、景気調整機能の面で所定の役割を果たしてきた。すなわち、資源配分面では高度成長から安定成長に移行するとともに産業基盤の整備から生活基盤の整備へと重点を移し、景気調整面でも「第二の予算」として一般財政を補完してきた。しかし、最近では、法人企業部門の資金需要減退により民間金融機関と政府金融機関との間で競合が生じており、また、1978、1979年度にみられたように多額の繰越し・不用が発生したことなどから、財政投融資機関そのものの存在意義が問題となっている。一方、一般会計の大量の国債発行に伴い、円滑消化の観点から、資金運用部資金によるかなりの国債引受けが行われてきたが、これは財政投融資、国債管理政策の両面から望ましくない。
[藤野次雄]
『石川周・行天豊雄編著『財政投融資』(1977・金融財政事情研究会)』▽『寺村信行他編著『図説 財政投融資』(1985・東洋経済新報社)』▽『河野惟隆著『財政投融資の研究』(1993・税務経理協会)』▽『宮脇淳著『財政投融資の改革――公的金融肥大化の実態』(1995・東洋経済新報社)』▽『宮脇淳著『財政投融資と行政改革』(PHP新書)』▽『原司郎著『財政投融資と住宅金融』(1995・住宅金融普及協会)』▽『岩田一政・深尾光洋編著、池尾和人・岩本康志・高橋洋一・中北徹・宮脇淳・吉野直行著『財政投融資の経済分析』(1998・日本経済新聞社)』▽『跡田直澄編著『財政投融資制度の改革と公債市場』(2003・税務経理協会)』▽『樋口均著『財政投融資』(教育社・入門新書)』
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(神野直彦 東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授 / 2008年)
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