エンジンの排気量が660シーシー以下と小さく、車体も長さ3・40メートル以下、幅1・48メートル以下、高さ2・00メートル以下と定められたコンパクトな自動車。比較的安価で、税金や保険料、高速道路の料金も安く、公共交通機関の少ない地方を中心に人気がある。2023年の国内販売は174万4919台で、国内新車販売の36・5%を占めた。
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日本独特の小型自動車制度、およびそれに基づく小型自動車の総称。免許、税金などの面で優遇処置を与えることにより、安価で経済的な小型車の普及を図ろうとする趣旨で設けられた制度である。
外国ではフランスに125ccおよび50cc以下の車を免許、税制の両面で優遇する制度があり、イギリスでは三輪車が税制上サイドカー付きのオートバイとして扱われる。しかし、いずれも限定された使用のための少数派で、日本の軽自動車のような完全に実用域の車が優遇されている例はほかにはみられない。
[高島鎮雄]
軽自動車は道路運送車両法、同施行規則、および道路交通法、同施行令、同施行規則により次のように規定されている。
(1)三、四輪自動車(側車付二輪自動車、小型特殊自動車、ポールトレーラーを除く、被牽引(ひけんいん)自動車を含む) 長さ3.4メートル以下、幅1.48メートル以下、高さ2.0メートル以下、エンジンの総排気量660cc以下、乗用車の定員4名以下、貨物車の積載量350キログラム以下。
(2)二輪自動車(側車付二輪自動車を含む) 長さ2.5メートル以下、幅1.3メートル以下、高さ2.0メートル以下、エンジンの総排気量125ccを超え250cc以下、乗車定員2名以下。
このほか、消費税法、地方税法(軽自動車税、自動車取得税)、自動車重量税法、自動車損害賠償保障法(自賠責保険)などが軽自動車を区分している。しかし現在では、道路交通法の免許関係条項には軽自動車という概念はなく、三、四輪の軽自動車の運転には普通免許が、二輪の軽自動車の運転には二輪免許が必要である。また道路運送車両法は自動車(軽自動車、小型特殊自動車、二輪の小型自動車を除く)の自動車登録ファイルへの登録を義務づけているのに対し、軽自動車については同施行規則が、都道府県知事に軽自動車届出書を提出しなければならない、としている。そのため一般の登録自動車に対して、軽自動車を届出(とどけで)自動車とよぶこともある。
[高島鎮雄]
軽自動車制度の発足以来、軽自動車にはさまざまな優遇処置が与えられてきたが、国民所得の向上や軽自動車自体の性能向上などの結果、現在ではその範囲は大幅に狭められている。自家用で乗用の軽自動車と小型車(エンジン排気量1000cc以下、車両重量1000キログラム)との差を列記すると次のようになる。( )内は1000cc以下、1000キログラムの小型車。いずれも2001年(平成13)現在。
消費税 工場出荷価格の5%(5%)
自動車重量税 年額4400円(年額1万2600円)
自動車取得税 取得価格の3%(5%)
軽自動車税 年額7200円(自動車税年額2万9500円)
自賠責保険料(本土) 2年間2万0300円(2年間2万7600円)
かつてあった軽自動車免許制度、車検や車庫証明の免除などの優遇処置は、現在はない。
しかし軽自動車は依然として、価格が低廉である、燃料の消費が少なく維持費が安い、小型なので扱いやすく、狭い道にも入り込め、保管場所も小さくてすむ、などの利点をもつ。そのため、一家に2台目のいわゆるセカンドカーとしての需要が多くなり、結果的に女性のユーザーが増えている。
[高島鎮雄]
日本にはすでに第二次世界大戦前に、幅1.3メートル以下の1人乗りで、エンジンの総排気量500cc以下のものは無免許とし、税金も減免する小型車の制度があった。免許、税金などの面で優遇処置を与えることによって小型車の普及を図ろうとするもので、戦後の軽自動車制度の雛(ひな)型といえる。軽自動車の語が初めて登場したのは1949年(昭和24)に施行された運輸省令の車両規則で、それによれば二、三、四輪の区別はなく、長さ2.8メートル以下、幅1メートル以下、エンジンの総排気量は4サイクルで150cc、2サイクルで100ccとなっていた。53年6月に車両規則が道路運送車両法に発展、同年8月に施行された同施行規則で三、四輪車と二輪車が区別された。このとき、三、四輪車の長さ3メートル以下、幅1.3メートル、エンジン総排気量360cc以下という、75年末まで長く使われる規格が確定した。
1955年ごろまでには早くも何種類かの軽四輪乗用車がつくられているが、多くは構造的にきわめて未熟であった。なかには注目すべきものもあったが、概して時期尚早で、長くは続かなかった。55年には当時の通産省が国産車育成のために、(1)4人乗り(または2人乗り100キログラム以上積み)、(2)最高時速100キロメートル以上、(3)平坦(へいたん)路を時速60キロメートルで走った場合1リットルの燃料で30キロメートル以上走れること、(4)大修理なしで10万キロメートル以上走れること、(5)月産2000台の場合15万円以内でつくれること、材料費10万円、工数70時間以内、エンジン総排気量360~500cc、車重400キログラム以下……という、いわゆる「国民車構想」を打ち出した。しかし当時の経済情況と技術では実現は不可能で、同計画はあえなく流れてしまった。それからまもない58年3月3日、富士重工業が、軽自動車の枠内で国民車構想に近い性能を実現したスバル360を発表した。同年5月に42万5000円で発売された同車は、なべ底景気を脱して岩戸景気へと進む経済情勢にも助けられて、59年に5000台、60年に1万2700台、61年に2万1800台と年産を伸ばし、9年後の67年5月には累計生産50万台を達成した。スバル360により軽自動車の可能性が立証された結果、先発の鈴木自動車工業(現スズキ)も再参入、東洋工業(現マツダ)、新三菱(みつびし)重工業(現三菱自動車工業)、ダイハツ工業、本田技研工業なども従った。こうして軽乗用車の年産は61年に5万台強であったものが、5年後の66年には12万台と倍増、さらにわずか3年後の69年には56万台と急増、70年には空前の75万台を達成した。しかしそれをピークとして小型車に市場を奪われ、75年には16万台と底を打った。そこで軽自動車の回生策として76年1月1日に、長さ3.2メートル、幅1.4メートル、総排気量550ccへの規格の拡大が実施された。その結果、しだいに市場を回復、83年には20万台まで戻した。しかし、その後の軽乗用車の年産は10万台の中ほどで伸び悩んだため、1990年(平成2)1月1日に規格を総排気量660cc、全長3.3メートルに拡大した結果、同年の生産は一挙に84万台に急増した。
1998年(平成10)10月には主として安全性向上のために車体寸法が長さ3.4メートル、幅1.48メートルに拡大され、エンジン排気量も660ccまでとなった。この新規格にあわせて各社が一斉に新型車を出したため、軽自動車全体の販売台数は99年に188万台、うち乗用車123万6000台と大幅に伸びた。
一方、軽商用車の場合は、まず1959年に軽三輪車ブームがおき、61年には四輪車に移行した。67年からは石油危機期を除いて年産50万台以上の市場を維持、73年からは乗用車の生産数をしのいだ。79年5月には鈴木自動車工業が、乗用車におけるFF2(ツー)ボックスの流行を逆手にとって、後席がやや小さいほかは実質的に乗用車と変わらない2ボックス・3(スリー)ドア車のスズキ・アルトを商用車として申請した。いわゆる軽ボンネットバン(軽ボンバン)とよばれるこの車は、15%(当時)の物品税を節約することによって47万円という低価格で発売され、低価格のゆえに学生や若い女性、家庭の主婦などの間に爆発的な人気を博した。その結果、軽乗用車の年産はピーク時の86~88年には150万台を超えた。しかし、1981年10月に軽の乗用兼用貨物自動車(ライトバン)に5%の物品税が新設され、84年5月には5.5%に引き上げられ、さらに89年4月に自動車の物品税が廃止されて消費税となり、軽自動車は乗用車も商用車も一律3%(現5%)となったために軽ボンバンのうま味はなくなり、軽商用車の生産数は急速に下降、95年には約80万台となり、99年の年産数は約65万台にまで減少した。また、乗用車の車体型式が2ボックスや1(ワン)ボックスなど多様化し、95年ごろからはRV(レクリエーショナル・ビークル)とかSUV(スポーツ・ユーティリティー・ビークル)とよばれる種類の車が軽自動車にも流行するなど、乗用車と商用車の境界がはっきりしなくなっているのが現状である。
なお日本の全自動車保有に占める軽自動車の比率は、2000年3月末現在で乗用車が17.9%、トラックが55.5%、四輪車合計では27%である。すなわち10台中3台近くが軽自動車ということになる。
[高島鎮雄]
『小磯勝直著『軽自動車誕生の記録』(1980・交文社)』▽『産業ジャーナル株式会社編『軽自動車産業の実態』(1986・アイアールシー)』▽『小関和夫著『スズキストーリー 1955~1997』(1997・三樹書房)』▽『中沖満著『懐かしの軽自動車』(1998・グランプリ出版)』▽『島田眸著『軽自動車革命だ!』(1999・そしえて)』▽『軽自動車検査協会編『軽自動車検査関係法令通達集』(2000・交文社)』▽『三栄書房編『軽自動車のすべて』各年版(三栄書房)』
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