翻訳|suffrage
明治時代の1889年に発布された大日本帝国憲法で帝国議会が設けられ、翌90年に初の衆院選を実施。選挙権は直接国税を15円以上納めた25歳以上の男性に限られた。納税額は徐々に緩和され、大正デモクラシーの高まりで1925年に撤廃。女性への参政権拡大は太平洋戦争後で、45年から「20歳以上の男女」に選挙権が認められ、46年公布の日本国憲法でも成年による普通選挙が保障された。世界では18歳選挙権の国が多く、日本では憲法改正に必要な国民投票の投票年齢を18歳以上にしたことを踏まえ、2015年6月の公選法改正で選挙権を18歳に引き下げた。
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一般には公務員を選定できる権利。選挙権は主権者たる国民が行使する権利であるが、それとの関連でいえばこの権利の行使には当然に公務員を罷免する権利も含まれなければならない。普通選挙の保障を規定した日本国憲法第15条で「公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である」と述べているのはそのためであろう。ここで公務員というのは中央・地方の諸官庁の公務員全体をさすものではなく、国民は国会議員、地方議会の議員、知事、市町村長などを選定できるにとどまる。罷免に関しては、最高裁判所裁判官の国民審査(憲法79条)、地方議会の解散請求(地方自治法13条・76条)や議員、長・役員などの解職請求(同法13条・81条・86条)が認められている。
選挙権は国民が政治に参加する権利つまり参政権のうちでもっとも代表的なものであるが、参政権に関するものとしては、憲法改正に関する国民投票(憲法96条)、一つの地方公共団体のみに適用される特別法に関する住民投票(憲法95条)、地方公共団体における条例の制定・改廃請求権(地方自治法12条・74条)、事務の監査請求権(同法12条・75条)がある。これらの政治的権利は選挙権をもつ者に認められている。公務員に選挙されうる権利は被選挙権とよばれ、選挙権の場合より年齢資格が高いのが普通である。たとえば衆議院議員、地方議会の議員、市町村長の場合は25歳以上、参議院議員、知事の場合は30歳以上である(公職選挙法10条)。
選挙権に関する詳細については「公職選挙法」第9条に次のように定められている。
(1)日本国民で年齢満18年以上の者は、衆議院議員及び参議院議員の選挙権を有する。
(2)日本国民たる年齢満18年以上の者で引き続き3か月以上市町村の区域内に住所を有する者は、その属する地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権を有する。
ところで、地方議会の議員及び長の選挙権を有する者が、ある市町村から引き続き同一都道府県内のほかの市町村に住所を移した場合は、その市町村内で3か月にならなくとも、当該都道府県の議会の議員及び長の選挙権を有する(9条3項)。
国会議員の選挙については、移転した直後であっても、選挙人名簿に載っている元の市町村で投票できる。選挙権および被選挙権を有しない者については「公職選挙法」第11条1項において次のように定めている。
(1)禁固以上の刑に処せられその執行を終えるまでの者
(2)禁固以上の刑に処せられその執行を受けることがなくなるまでの者(刑の執行猶予中の者を除く)
(3)法律で定めるところにより行われる選挙、投票及び国民審査に関する犯罪により禁固以上の刑に処せられその刑の執行猶予中の者
選挙権は20世紀に至るまでは各国とも財産資格、納税額、性別などにより制限する制限選挙制をとっていたが、第二次世界大戦後の今日ではほとんどの国々で男女平等普通選挙が採用されるようになった。選挙権の年齢資格については、満18歳以上となっている国が多い。
[田中 浩]
一般的に選挙に参加し公職者を選定しうる資格をいう。また,選挙で公職者に選定されうる資格を被選挙権という。選挙権の法的性格については議論があり,(1)議員などを選挙することを内容とする個人の生得的かつ不可譲の権利だとする説,(2)権利ではなく,公の職務だとする説,(3)選挙に参加する権能を法によって承認された権利だとする説,などがある。選挙権には種々の要件があり,それを満たした者についてのみ与えられている。こうした制限はしだいに撤廃され,現在では普通選挙制がほとんどの国で確立している。選挙権の要件の主要なものは次のとおりである。(1)国籍 選挙権は国政への参政権として保障された国民の権利であるから,国籍のない者には認められない。(2)年齢 選挙権は一般に成年に達した者について認められている。日本では20歳以上の者に選挙権が認められており,アメリカ,イギリス,西ドイツ,フランスなどの国では1970年代に21歳以上から18歳以上へと選挙権の年齢が引き下げられている。(3)住所 一定期間居住していなければ選挙権が認められない。日本では,国政選挙については住所の要件はないが,選挙人名簿への登録は3ヵ月居住を要件としているので,転居後3ヵ月以内の選挙については前の住所地で選挙権を行使することになる。地方公共団体の選挙については,その区域内に3ヵ月以上居住していなければ選挙権は認められず,また,前の住所地でも選挙権は認められない。(4)財産・納税資格 かつての制限選挙のときには,議会が租税に対する同意を与える等族会議から発達したという沿革的理由により,一定の財産所有や納税額が選挙権の要件となっていたが,現在の普通選挙ではこの要件は存在しない。(5)教育 一定の読み書き能力を要件として有権者テストがアメリカなどで行われたことがあるが,現在では廃止されている。(6)性 かつて女性には選挙権が認められなかったが,現在は男女平等に選挙権が認められている。(7)以上の要件のほかに,禁治産者および,禁錮以上の刑に処せられその執行を終わるまで,あるいは,その執行を受けることがなくなるまでの者,および,選挙等に関する犯罪により禁錮以上の刑に処せられその刑の執行猶予中の者には選挙権は認められない。
→選挙
執筆者:川人 貞史
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(蒲島郁夫 東京大学教授 / 2007年)
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…日本の近代選挙制度は,1889年の大日本帝国憲法の制定にともなって制定された衆議院議員選挙法に始まるが,納税額など一定の財産資格を付した制限選挙の時代,さらには選挙運動の規制を強めたうえでの男子普通選挙制の時代が続き,公選法が具現している原理の確立は日本国憲法の制定をまたなければならなかった。
[選挙権と選挙人名簿および被選挙権]
日本において,選挙権は,一般的には,国民の権利と解されている。衆・参議院議員の選挙権は,日本国民である年齢満20歳以上の者に原則として認められている(公職選挙法9条)。…
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