資金の貸借において、資金の貸し手(資金余剰部門、主として家計)と借り手(資金不足部門、主として企業)との間に金融機関が介在して資金の流れを媒介する金融方式をいう。これに対し、借り手が証券市場を通じて貸し手から直接に資金調達を行う金融方式が直接金融である。間接金融の場合、金融機関が預金、金融債などの間接証券を発行して貸し手から資金を集め、その資金を借り手に対して融資する形態がとられ、金融仲介機能ともよばれる。これは貯蓄資金が投資資金に転化するメカニズムであり、貸し手にとっては金融機関の間接証券という安全性・流動性の高い資産の保有を可能にする一方、零細な貯蓄資金をプールし、ロットの大きい資金として借り手に供給する機能を果たすので、借り手にとっては資金コストの安い資金の調達を可能にする。貸し手の事業計画を評価するなどによる情報生産により情報の非対称性を緩和して金融仲介するのが金融機関である。日本では第二次世界大戦後はとくに間接金融が圧倒的に優位であったが、その理由としては、(1)家計の所得水準が低いため貯蓄資金が零細で、その金融資産選択が安全性・流動性を第一とした預金に向けられたこと、(2)企業の資金調達が資金コストの安価な銀行借入金に依存したこと、(3)低金利政策がそれを助長するとともに、金利機能が作用しないため、証券市場が未発達にとどまったこと、(4)金融機関優遇策がとられ、経済成長に必要な資金である成長通貨供給メカニズムとして間接金融が活用されたこと、などがあった。間接金融は、経済全体の資金効率を高め、高度成長を支える役割を果たしたが、反面、企業財務の悪化(オーバーボローイング)、金融機関の預金獲得競争の激化、系列融資の推進、金融の二重構造などの問題も発生せしめた。1980年代後半以降の金融自由化のなかで、大企業の資本市場調達の増大や内部金融の増大、金融機関が貸出債権を資本市場で売却する市場型間接金融(証券化)の進展もみられ、間接金融も変化している。しかし、資金調達面では中小企業を中心に間接金融依存度は高水準にとどまっている。
[村本 孜]
『J・G・ガーレイ、E・S・ショウ著、桜井欣一郎訳『貨幣と金融』(1967・至誠堂)』▽『鈴木淑夫著『現代日本金融論』(1974・東洋経済新報社)』▽『山下邦男著『金融制度』(1979・東洋経済新報社)』▽『鹿野嘉昭著『日本の金融制度』第2版(2006・東洋経済新報社)』
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… 日本の企業は,第2次大戦後,証券市場が戦後の混乱で十分成長しきれないなかで,高度成長を始めたこともあって,固定的設備・工場への設備資金を金融機関からの借入れに大幅に依存して資金調達を行った。いわゆる間接金融方式(直接金融・間接金融)といわれるものである。これは,日本の株式会社における資本構成を悪化させ,自己資本比率20~30%の大企業が続出した。…
…
[経理部門の重要性増大]
戦前から経理部門は数少ない本社部門の一つであったが,高度成長期における巨大な資金需要は経理活動をさらに重要なものとしていった。証券市場が十分再生しない間に,企業の高度成長が先行した状況において,長期的低金利政策を前提にして金融機関からの長期借入金が重要な資金源泉となり,この間接金融方式は1960年代に入って一般化した(〈直接金融・間接金融〉の項参照)。こうして経理部門は,金の面から高度成長を充足する重要部門となった。…
…資金の貸借取引である金融活動においては,収入を超えて支出を行うような赤字主体(資金不足主体)が存在すると同時に,他方では収入が支出を上回る黒字主体(資金余剰主体)の存在することが不可欠である。この黒字主体から赤字主体へと資金が移転する過程に注目して,直接金融と間接金融の区別がなされる。すなわち直接金融とは,企業や政府などの赤字主体が不足資金を調達するために発行する株式,国債などを黒字主体が直接購入する形で資金が移転する方式である。…
※「間接金融」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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