革命防衛隊(読み)かくめいぼうえいたい

知恵蔵 「革命防衛隊」の解説

革命防衛隊

イラン・イスラム共和国の革命体制の護持を目的とする組織。国内に強固な権力基盤を築いており、中東周辺地域にも強い影響力を持つ。共和国設立直後の1979年5月、イラン革命の指導者ホメイニによって創設された。当初は、国内の反革命派の監視・排除が目的で、規模も数千人ほどだったが、革命の翌年に勃発したイランイラク戦争(~88年)を契機に規模・活動領域とも拡大。正規軍(国軍)をしのぐ存在になり、さらにアフマディネジャド大統領(在位2005~13年)をはじめ、防衛隊の出身者を政府の中枢に送り出すようになった。
現在、最高指導者ハメネイの指揮の下、情報収集・工作活動を担うコッズ(クドゥス)部隊、動員力を誇る民兵組織バスィージュほか、正規軍とは別の陸海空軍隊を持ち、核開発にも関与していると伝えられる。兵力数は約12~13万人(バスィージュを除く)。また、複合企業体ハタム・アルアンビアも運営し、建設・資源・不動産等、多くの分野で事業を展開している。地方のインフラ整備や治安維持、災害支援なども行っており、民兵組織バスィージュは貧困層の受け皿にもなっていることから、革命防衛隊を支持する声は、とりわけ地方のイスラム保守派の間で強い。さらに中東の「シーア派の三日月地帯」の拡大を目指す、革命イデオロギーやシーア派イスラム思想の輸出装置としての役割も担っている。
アメリカは、07年に革命防衛隊を国際テロ組織に認定。20年1月には革命防衛隊のソレイマニ司令官を無人攻撃機を使って殺害した。トランプ大統領は「戦争を止めるための行動」と正当化したが、報復としてイランがイラク内の米軍基地をミサイル攻撃したことから、両国の緊張が一気に高まった。ソレイマニは最高指導者ハメネイの腹心で、「事実上のナンバー2」とも目される。先鋭エリートのコッズ部隊を率い、様々な諜報・工作活動を展開すると共に、レバノンヒズボライエメンのフーシ他、周辺地域のシーア派過激組織の育成・支援にも深く関わってきた。

(大迫秀樹 フリー編集者/2020年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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