間違った情報や意図的なデマだけでなく、根拠の不確かな噂(うわさ)やあいまいな情報をきっかけに生じる経済的損害。物やサービスの売上げ不振や輸出停止のほか、観光客減少などの被害が生じる。品質や安全性にまったく問題のない場合でも起きるため、正確な情報を迅速に提供することが、風評被害の防止や早期払拭(ふっしょく)につながるとされる。1973年(昭和48)に女子高生の噂話をきっかけに豊川信用金庫で取り付け騒ぎが起きた事件や、1996年(平成8)の腸管出血性大腸菌O157集団感染で原因とされたカイワレダイコンの買い控えが全国に広がった問題などが、風評被害にあたる。
2011年(平成23)3月の東日本大震災で発生した福島第一原子力発電所事故後、放射線被ばく量の安全値が不明確であったこともあり、農産物、食品、工業製品の販売不振や輸出停止が被災地だけでなく、全国で起きた。また全国の観光業が打撃を受け、日本政府観光局によると、2011年の来日外国人観光客数は前年より27.8%減った。
風評被害に対する法制では、違法性のあるデマや噂に対し、刑法233条「信用毀損(きそん)及び業務妨害罪」が適用される。相場変動などを目的とした「風説の流布」に対しては、金融商品取引法に基づき、10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金に処される。また地方自治体独自の条例としては、産業廃棄物処理施設のある香川県直島(なおしま)町が2000年に「風評被害対策条例」を制定。同町で事業活動をする企業などが風評被害を受けた際には、被害の範囲内で風評被害対策給付金が支給される。
[編集部]
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