香港人権法(読み)ほんこんじんけんほう

知恵蔵 「香港人権法」の解説

香港人権法

香港の「高度な自治」の検証を、米国務省に義務付ける米国の法律。2019年11月、上院で全会一致、下院でも圧倒的多数(反対票1)によって可決され、トランプ大統領が署名したことで成立した。これにより米国が、19年6月から激化している香港市民による抗議行動(五大要求デモ)を支持する、という明確な立場を内外に示すことになった。
米国はこれまで、香港中国返還と同時(1997年)に発効した「香港政策法」の下、一国二制度の維持を条件として、香港に関税率やビザ発券等で、中国とは異なる通商上の優遇措置を講じてきた。米国にとっては、人権外交の推進、香港の米企業保護という狙いがあり、「香港人権法」はこの延長線上の法律とも位置づけられる。今後、米国務省が行う毎年の検証の結果、一国二制度下での「高度な自治」や香港市民の人権が侵害されていることが判明すれば、米政府は優遇措置を見直し、侵害した人物や当局の責任者に一定の制裁を科すことが可能となる。また、香港デモの発端となった「逃亡犯条例」(その後撤回)を念頭に、同種の法が制定された場合には米国人を保護するという内容の条文を盛り込むなど、香港政府や中国当局を強く牽制(けんせい)している。同時に、香港当局がデモ制圧のため使っていた催涙ガスやゴム弾などの武器を香港に輸出することを禁じる法律も成立させている。
これに対して、香港政府は「重大な内政干渉であり、情勢改善につながらない」と抗議。中国外務省も「露骨な覇権行為であり、深刻な国際法違反」と米国を激しく非難し、断固たる報復措置を取るという方針も表明した。

(大迫秀樹 フリー編集者/2020年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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