高福祉高負担(読み)こうふくしこうふたん

知恵蔵 「高福祉高負担」の解説

高福祉高負担

社会保障の規模を示す考え方。国のかたちを示すものとして使われる。「高福祉高負担か低福祉低負担か」というテーマは、戦後の欧米先進国の2大政党の基本的対立軸となり、国の選択肢として提案されてきた。日本においても、首相諮問機関である臨時行政改革推進審議会(新行革審)が1990年に「高福祉高負担型ではなく、公私分担・協力を基礎とした活力ある福祉社会をめざす」と答申。そのために、高齢化のピーク時でも国民負担率が50%を下回る簡素で効率的な政府とすることを求めたように、国民負担率に絡めて論じられることが多い。また、同じように国のかたちを示す考えに「大きな政府/小さな政府」がある。大きな政府論は社会的な公正のために政府の役割を重視し、所得の再分配や雇用機会の創出、産業規制などを求める。社会保障は高福祉高負担の立場で、欧州の社会民主主義政党が掲げてきた。小さな政府は、政府の市場介入は有害との立場で、競争原理による経済的自由主義、自立自助を説く。大きな政府を非効率と批判し、規制緩和減税を掲げる。レーガン元米大統領やサッチャー元英首相が代表とされ、自民党は2005年の総選挙での政権公約(マニフェスト)で「小さな政府をめざす」とした。

(梶本章 朝日新聞記者 / 2007年)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「高福祉高負担」の意味・わかりやすい解説

高福祉高負担
こうふくしこうふたん

社会保障の規模を示す考え方で、税負担を重くして福祉予算を手厚くする政策スウェーデンノルウェーなど北欧諸国は社会民主主義政権であり、社会主義国のような高福祉高負担政策が定着している。この対極にあるのがアメリカで、共和党が主張する「小さな政府」政策が「低福祉低負担」を求めており、これが社会保障政策の根幹になっている。民主党のオバマ政権が医療福祉制度の充実を目ざしているが、共和党の反対により難航しているのもそのためである。日本では小泉純一郎政権時代に、アメリカのレーガン政権、イギリスのサッチャー政権にならった「小さな政府」を目ざしたものの、社会保障予算の削減に手をつけることはできなかった。2008年(平成20)に麻生太郎(あそうたろう)政権は社会保障水準を維持するためには伝統的な「中福祉小負担」から「中福祉中負担」への移行が必要と宣言し、その後の消費税増税へとつながった。

[編集部]

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