出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報
鹿児島県の中央部を占める湾。錦江湾とも呼ばれる。東は大隅半島,西は薩摩半島に囲まれ,南は太平洋に開口する。東西幅10~20km,南北約70kmで,くの字形をしている。湾は湾奥の姶良(あいら)カルデラ,湾口の阿多(揖宿(いぶすき))カルデラとこれを連ねる南北断層によって生じたとされ,沿岸には急崖の連続する部分が長い。また湾底も深く,湾口では100m前後に過ぎないが,中央の最深部では237mに達する。湾の中央よりやや北寄りに桜島があり,以前は島であったが1914年の大噴火の時,溶岩によって大隅半島と地続きになった。桜島と西側の鹿児島市街との間も浅くて約40mに過ぎず,このため鹿児島湾は深さからいえば桜島によって南北に二分されていることになる。火山性のために沿岸には温泉が比較的多く,代表的なのは湾口に近い指宿(いぶすき)市内の指宿温泉であるが,そのほかに北岸近く霧島市の旧隼人(はやと)町の日当(ひなた)山,鹿児島市内の鹿児島,桜島島内の古里(ふるさと),垂水(たるみず)市の海潟(かいがた)などの温泉がある。また北部には海底から火山性ガスが噴出し,小気泡となって海面に出ている所があり,〈たぎり〉と呼ばれている。表面水温は8月が29℃,3月が15℃で規則的に変化するが,海底では通年15℃くらいである。また潮差は大潮の時に最大3mをこえる。潮流は一般には大きくないが,桜島と鹿児島市の間では最大1.5ノットに達することがある。湾内ではタイ,イワシ,サバの漁獲が多く,イワシは特にカツオの餌として珍重される。また最近ではブリ(ハマチ),真珠の養殖も盛んになっている。沿岸には長大な河川や大きな平野に乏しく農業的には恵まれていないが,その他の点では県の中核をなしている。特に観光的には火山と温泉の集中区であり,霧島屋久国立公園の重要拠点である。1972年大隅線の海潟温泉~国分間が開通して指宿枕崎線,日豊本線と接続し,湾岸の鉄道がつながった。しかし大隅線は87年に全線廃止。湾内は以前は県内海上交通の中心で,今日でもやや衰えたとはいえ鹿児島港~桜島,鹿児島港~垂水,山川~根占など,大隅・薩摩両半島を結ぶ重要航路が走っている。
執筆者:服部 信彦
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
鹿児島県大隅(おおすみ)、薩摩(さつま)両半島に抱かれた南北約80キロメートル、東西約20キロメートルの湾。錦江湾(きんこうわん)ともよばれる。湾奥近くに桜島がある。湾口部の水深は約100メートルであるが、湾央へ入ると200メートル以上の部分が広がり、桜島と鹿児島市を結ぶあたりでは約40メートル、さらに湾奥へ進むと約200メートルの水深をもつ部分もある。湾央部を南海盆、湾奥部を北海盆、浅い部分を西桜島水道とよぶこともある。湾の形成は指宿(いぶすき)(阿多(あた))、姶良(あいら)両カルデラに起因するといわれる。1914年(大正3)桜島の大噴火は多量の溶岩を噴出し、大隅半島との幅400メートル、深さ70メートルの東桜島水道を埋め尽くし、桜島は陸続きとなった。湾岸に鹿児島、桜島、垂水(たるみず)、根占(ねじめ)、山川などの港があり、フェリーボートで結ばれるほか、鹿児島港から奄美(あまみ)、沖縄方面への航路にもあたっている。
[塚田公彦]
出典 日外アソシエーツ「事典・日本の観光資源」事典・日本の観光資源について 情報
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