漢文読下し文(読み)かんぶんよみくだしぶん

世界大百科事典(旧版)内の漢文読下し文の言及

【和漢混淆文】より

… 純粋な和文の頂点を平安女流文学の文章に求めて,それを一つの極とすると,それは散文といっても論理的な構文を形成することなく,きわめて心理的な,また意識の流動・明滅のまにまに,それを忠実に追跡する文章である。それに対極をなす漢文読下し文は,論理を述べるに適した接続詞や段落の冒頭を示す発語を有し,代名詞などをも的確有効に用いるので,和文に付加された漢文読下し文の口調は,散文としての和文を,一方では実用に耐え,他方では文学的表現にもかなう両面を有するものに変質させた。また逆に《将門記》のように,漢文のつもりで書かれた日本語文(いわゆる変体漢文)のもの,あるいは《三宝絵詞(さんぼうえことば)》のような宗教文学を出発点もしくは基調として,和文の要素,ことに歌物語を祖とする説話などを合併しつつ,別途の和漢混淆が生じ,係り結びの使用や副詞,形容詞の和風の選択,助詞,助動詞の微妙で豊富な使用があらわれる。…

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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」