《スラッファ以降のマルクス》(読み)すらっふぁいこうのまるくす

世界大百科事典(旧版)内の《スラッファ以降のマルクス》の言及

【労働価値説】より

… 《資本論》の方法になお残された問題があることを意識しつつ,それを新たな角度から把握しなおそうと試みる欧米のマルクス経済学者のなかには,マルクスの価値論を単なる労働による商品の交換価値の決定の問題にとどめることなく,剰余価値の生産をめぐる資本と賃労働との生産関係を解明するものとする見解を主張するものがあり,それはデサイMeghnad Desai(1940‐ )の《マルクス経済学》(1979)のように〈目に見えない価値の領域〉と〈目に見える価格の領域〉とを次元的に区別し,日本の宇野理論による研究の成果と興味ある類似を示しているものもある。他方,論争の過程で近代経済学の側から労働価値説がきわめて限定的な条件でしか成立しえないとする森嶋通夫や,それを形而上学として葬り去ろうとするP.A.サミュエルソンなど,かつてO.ランゲやJ.ロビンソンなどが主張したようないわば伝統的な理解の枠のなかでの議論をくり返しているもののほかに,最近マルクス経済学者のなかにも,P.スラッファの影響を受けたスティードマンIan Steedman(1941‐ )の《スラッファ以降のマルクス》(1977)のように,結合生産物の場合には負の価値が成立しうるとして労働価値説を否定する論者があらわれて大きな関心を集めている。しかしこの種の議論は数学的推論の特殊性によるものと考えるべきであって,投下労働量が負の価値を生むことは経済的にはありえないことであり,労働価値説がこれによって否定されることはない。…

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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」