《家族,私有財産および国家の起源》(読み)かぞくしゆうざいさんおよびこっかのきげん

世界大百科事典(旧版)内の《家族,私有財産および国家の起源》の言及

【エンゲルス】より

… 理論活動は多岐にわたるが,とくにマルクス主義の各種分野への一般化が重要である。《家族,私有財産および国家の起源》(1884),草稿《自然弁証法》(リャザーノフ編により1925年刊)などもその成果であるが,とりわけ《反デューリング論》(1878)はマルクス主義社会科学の平明な見取図として広く受け入れられ,時々の主流のマルクス主義理論(ドイツ・マルクス主義→ソ連マルクス主義)は主としてこれに依拠している。また,その一章に少し手を加えたパンフレット《空想から科学へ》(1880)は最も多く読まれた入門書である。…

【家族】より

…その典型がL.H.モーガンで,彼は《古代社会》(1877)において,婚姻形態を原始乱婚制からもっとも進化した一夫一婦制に至る数段階に配列し,家族形態もそれに対応させた。この仮説の基礎になっている親族名称の分析は,人類学史上画期的なものとされ,さらにエンゲルスの《家族,私有財産および国家の起源》(1884)にそのまま踏襲されて大きな影響力を振るった。しかしその後の人類学者の研究の結果,彼の学説には否定的見解が多く出されている。…

【原始共産制】より

L.H.モーガンの《古代社会》(1877)は,血縁にもとづく自然的共同体(氏族,部族)こそ本源的な人間の社会的結合であり,夫婦という非血縁関係を中核とする家族は,第2次的な関係で,しかも本来の血縁共同体に対立し,その解体にともなって成長してくる新しい関係であること,血縁共同体は本来は母系制であることを示した。これによれば原始共産制は婦人の隷属も奴隷制も知らない真の平等社会ということになる(エンゲルス《家族,私有財産および国家の起源》1884)。モーガン,エンゲルスの構想および素材については今なお論争されている。…

【氏族制度】より

…そして一方では,婚姻および家族の制度の進化のあとをたどることによって,氏族制度がおそらく,かのプナルア家族と名づけた群婚の形態から発生したものであろうと論じ,他方では,財産の観念とその相続規制の発達のあとをたずねて,原始の母系制が父系制に変わり,民主的な氏族共同体が貴族階級の支配に移っていく過程を考察したのである。 モーガンの《古代社会》は,いわゆる歴史以前の人間社会の研究に,先人未踏の分野を開拓した労作として,その後の学界に画期的な影響を与えたが,とくにF.エンゲルスは,A.vonハクスタウゼンやG.L.マウラー以来,インドからアイルランドにわたって,社会の原始形態であったことが発見された土地を共有する村落共同体の原初的な目的や組織が,氏族の真の性質と地位とに関するモーガンの発見によって,はじめて明らかにされたとなし,その著《家族・私有財産および国家の起源》(1884)において,モーガンの結論を全面的に採用するとともに,モーガンのわずかに言及するにとどまったケルト人およびドイツ人の氏族と,ドイツ人の国家形成とについて,それぞれ1章を設けて詳論した。ことに領土と公権力とによって特徴づけられ,階級的対立の中から階級支配の手段として生まれた国家に対し,モーガンが国家以前の社会組織として解明した氏族制度に向かっては,〈この氏族制度こそそのいっさいの天真さと単純さとにおいて驚くべき制度だ! 兵士も憲兵も警官もなく,貴族も国王も総督も知事または裁判官もなく,牢獄も訴訟もなくて,いっさいが規則正しく進行する。…

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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」