世界大百科事典(旧版)内の《散所――その発生と展開》の言及
【散所】より
…森末の研究は,中世における散所の存在形態を明らかにするのを主眼とし,関係の史料の博捜と,考証の厳密さとにおいて比類なかったが,散所そのものの定義としては,〈一定の居所なく随所に居住せる浮浪生活者を指す〉とするにとどまり,さらに厳密な定義は,のちの研究の進展にまたねばならなかった。 太平洋戦争の終結による民主主義思想の高揚と部落解放運動の再生は,被差別部落史の研究に新気運の高まりをもたらしたが,古代・中世にわたる領域では林屋辰三郎が54年に《`山椒大夫’の原像》《散所――その発生と展開》の2論文を発表し,散所の歴史的研究に一時期を画した。とくに後者では,古代社会における身分的差別が中世社会では地域的表現をとりながら散所と河原(かわら)とに集約されたこと,散所においては地子物(じしもつ)(年貢)を免除される代りに住民の人身的隷属が強いられたこと,さらには散所の民が商人・職人の源流をなし,散所は〈座〉を中心とした商工業の形成の前提条件をなしたこと等々が提唱された。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」