世界大百科事典(旧版)内の《西行物語絵巻》の言及
【西行】より
…旅の歌僧,遁世聖,西行に関する説話は《古今著聞集》《古事談》《沙石集》《源平盛衰記》などに記されておびただしい数にのぼり,《吾妻鏡》などにも採録されたが,とくに《撰集抄》は,鎌倉時代の各地の説話を旅する西行の見聞としてまとめたもので,西行の伝説化に大きな役割を果たした。他方西行の伝記を書いた《西行物語》《西行物語絵巻》も,中世の人々の間で,無常である現世を捨てて,孤独な旅の生活のなか花や月にあこがれる数寄の心を和歌に託すという,人間の生き方の理想をあらわすものとして読まれ,さまざまな西行伝説の原形となった。西行の伝説は,発心出家の動機と決断をめぐるもの,山居のきびしい修行にたえる行者の姿を語るもの,文覚や西住などとの交遊,崇徳院の供養に関するもの,頼朝にもらった銀の猫を門外に遊ぶ子供に与えたというような無欲潔癖な性格を伝えるもの,院の女房や江口の遊女と歌を読みかわしたというような数寄の心の持主として伝えるもの,など多方面にわたっている。…
【西行物語】より
…没年をはじめ,伝記は必ずしも史実どおりではなく,伝説・説話的な色彩が強いが,〈道心〉と歌道への〈すき〉に生きた西行の姿を描いて,《問はず語り》の著者や芭蕉など,後世の西行理解に大きな影響を与えた。【今西 祐一郎】
[西行物語絵巻]
西行の生涯の事蹟,逸話を描いた絵巻。もと3~4巻と思われるが,2巻のみ不完全な形で現存。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」