世界大百科事典(旧版)内のいたり料理の言及
【カモ(鴨)】より
…近世に入ると,武家は鶴を珍重したが,カモは庶民層によってこよない美味とされるようになり,カモやカモの味の語は,無上のごちそうや快楽,あるいは獲物,幸運などを意味するようにもなった。井原西鶴の作品にはカモ料理の名が多く見られるが,とくに《日本永代蔵》には〈鴨鱠(かもなます),杉焼のいたり料理〉という語があって注目される。いたり料理は手のこんだぜいたくな料理の意で,脂皮を除いて細切りにした肉をあたためた酒で洗ってワサビ酢をかける鴨鱠,杉箱の底に塩をぬりつけて火にかけ,その中でみそを溶かしてカモ,タイ,豆腐,ネギ,クワイ,ヤマノイモなどを煮て食べる杉焼といったものが,代表的なぜいたく料理だったというわけである。…
【焼物】より
…杉箱の中にみそを濃く溶いて煮立て,そこへタイ,カモなどの魚鳥や野菜を入れて煮るもので,杉箱の底にはのり(糊)で塩を厚く塗りつけて焼けないようにした。タイやカモの肉にほのかな木香(きが)をうつすというしゃれたもので,《日本永代蔵》はぜいたくきわまる料理という意味の〈いたり料理〉の一つにこれを挙げている。ウナギは蒲焼の調理法の革命的変化によって一躍万人の賞美するものになり,しぎ焼がシギそのものの焼鳥からナスの料理に変わったのも,きじ焼が同様にキジを材料とするものから豆腐の料理へ,さらに切身の魚の付け焼きへと変化したのも,江戸時代のことであった。…
※「いたり料理」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」