世界大百科事典(旧版)内のインペトゥスの言及
【力】より
…このとき力は,運動の原因である。慣性運動のように,一見作用力が働いていないようにみえる運動にも強制的運動力は働いているのであって,それは,フィロポノスの〈非物体的asōmatosな運動力〉,イスラムの〈マイルmayl〉,そして14世紀以降のヨーロッパの〈インペトゥスimpetus〉などの概念に結実している。 ガリレイは慣性運動を〈力の働かない〉運動としてとらえることに成功し,デカルトはそれを〈等速直線運動〉として定義したが,デカルトにおいては,運動と物質とは,神が創造に当たって同等の資格で措定したものであり,したがって,運動はいかなる場合にも減少したり消滅したりすることはない,という立場をとった。…
【ビュリダン】より
…オッカムの提唱した唯名論の立場を批判的に継承・発展させ,主として自然哲学の分野で優れた研究を行うとともに,ニコル・オレーム,ザクセンのアルベルトのような逸材を育成して,パリ学派と呼ばれる学統の創始者となった。彼の科学的達成としてまず第1に挙げられるのは,アリストテレスの投射運動論をまっこうから批判して,動者から動体に直接こめられるインペトゥスimpetus(勢い)という力学的概念を新たに導入したことである。そしてこの概念を巧みに適用することによって,投射運動のみならず,落体の加速運動,物体の回転運動などのさまざまな運動現象を統一的見地から説明することができた。…
【力学】より
…したがってむしろ,運動学的に論じられ,その加速度現象が注目されていた。これが力学的考察の対象になるのは,フィロポノスの着想をイスラムから受け取って14世紀パリを中心に誕生したインペトゥス派においてであったといえる。インペトゥスimpetusは〈非物体的運動力〉とほぼ同じ概念であるが,インペトゥス派では,自然落下の加速度現象にも用いられ,落下におけるインペトゥスの蓄積が加速度の原因であると考えられた。…
※「インペトゥス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」