世界大百科事典(旧版)内のパストラーレの言及
【パストラル】より
…しかし,歴史的に眺めてみると,中世からルネサンスにかけては,〈羊飼いの恋〉をテーマにした抒情詩や劇詩と手を携えて,世俗歌曲やオペラの中で,いわゆる〈パストラルもの〉が有力な一ジャンルを形成した。さらにバロック時代に入ると,羊飼いの群れによる幼子イエスの礼拝を想い起こさせる牧笛の響きを模した器楽曲が,クリスマスの音楽として愛好され,パストラーレpastorale(イタリア語)と呼ばれた。コレリの《クリスマス協奏曲》の終楽章は特に有名な例で,ひなびた抒情的旋律と6/8ないし12/8拍子のたゆたうようなリズムが,器楽的なパストラーレの一般的特色となった。…
【田園交響曲】より
…ベートーベン作曲の交響曲。この《交響曲第6番ヘ長調》作品68は,《交響曲第5番》の〈運命〉という通称とは異なり,作曲者自身の命名により《パストラーレPastorale(田園)》と呼ばれている。ロマン派標題交響曲の先駆をなすこの作品は,その対概念である絶対交響曲の頂点をなす《運命》作品67とほぼ同時期に作曲されている。…
【ベートーベン】より
…ベートーベン唯一のオペラ《フィデリオ》作品72第1稿(1805)初演(1805年11月20日)の失敗もその時期が有力貴族不在のフランス軍占領下という最悪条件にあったことも考慮しなければならないだろう。しかし,不安定な社会情勢下にあっても1806‐08年は〈傑作の森〉と呼ばれる創作の絶頂期にあたり,《交響曲第4番》作品60(1806),《第5番・運命》,《第6番・パストラーレ》(《田園交響曲》)作品68(1808),《ピアノ協奏曲第4番》作品58(1806),《バイオリン協奏曲》作品61(1806),《コリオラン序曲》作品62(1807)などの大管弦楽曲が次々に生み出されている。 1809年に《ピアノ協奏曲第5番・皇帝(エンペラー)》作品73を作曲して後期様式時代に入っていく。…
※「パストラーレ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」