世界大百科事典(旧版)内のベック,H.G.の言及
【皇帝教皇主義】より
…ビザンティン学者たちによってそれがビザンティン帝国の実情にそぐわないことは,しばしば指摘されている。ベックHans‐Georg Beckがその一人であり,彼はそれにかえて,〈政治的(ないし,政治化された)オルトドクシーPolitische Orthodoxie〉概念を提示する。彼によれば,それは,キリスト教をローマ帝国の精神的統一基盤にしようとしたコンスタンティヌス大帝が,教義をめぐる教会内の争いに直面して,〈正しい教義(オルトドクシー)〉についての裁定者の地位に立たされたことに起因し,皇帝はこうして自らが決定した〈正しい教義〉を,つづいて,権力をもって実現せざるを得ず,この体制が定着するなかで,政治的オルトドクシーに所属しない多数のキリスト教徒をかかえたビザンティン帝国では,そのために,政治の次元での判断の自由の余地は極端に狭められてしまう結果となり,これを確保しようとすれば,皇帝は〈政治的オルトドクシー〉を原理的に否定することなしに,それからできるだけ抜け出すという困難な道を模索しなければならなかった。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」