世界大百科事典(旧版)内の《ペルシーレスとシヒスムンダの苦難》の言及
【セルバンテス】より
…セルバンテスはその序文で,〈わたしはスペイン語で初めて短編小説を書いた男だ〉と自負しているが,事実,それまでのイタリアの作品をそのまま引き写したようなものと違って独創的なものであり,なかでも《リンコネーテとコルタディーリョ》《ガラスの学士》《ジプシー娘》などは珠玉の作品である。《ドン・キホーテ》と《模範小説集》が,当時の文学状況における革新的な作品であるのに対し,処女作の《ラ・ガラテーア》と遺作《ペルシーレスとシヒスムンダの苦難Los trabajos de Persiles y Sigismunda》(1617)は,それぞれ〈牧人小説〉〈巡礼小説〉という当時流行の形式の枠内に安住して,そのなかで作者が自在に想像力を飛翔させたものといえる。2人の主人公が波乱に満ちた長い巡礼の後,聖都ローマにいたって大願成就という《ペルシーレスとシヒスムンダの苦難》には愛のテーマ,詩的要素,神秘性がセルバンテス独自の高雅な文体で展開されている。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」