世界大百科事典(旧版)内の《ラッキー・ジム》の言及
【アンチ・ヒーロー】より
…20世紀,とくに第2次世界大戦後の小説ではネオ・ピカレスク小説が再評価され,伝統的な小説に見られるような,肉体,精神ともに高潔な主人公は否定され,従来の道徳基準からすればとても英雄と呼べないような人物を好んで主人公に置いた。例えばキングズリー・エーミス作《ラッキー・ジム》(1954)の主人公は,仰ぎ見るべき人間ではないが,現実に会えそうな親しみやすいアンチ・ヒーローである。【小池 滋】。…
【エーミス】より
…オックスフォード大学卒業後,スウォンジー大学で英文学を講じ(1949‐61)ながら文筆に従事。最初は《心の形》(1953)などの詩集を発表していたが,第2次大戦後の地方大学の若い歴史の講師が,周囲のとりすました生活に反逆してさまざまの滑稽な事件を引き起こす小説《ラッキー・ジム》(1954)で一躍戦後文学の旗頭となった。この後も《この不安な気持》(1955),《ここが好き》(1958),《お前のような女を》(1960),《反死同盟》(1966),《今欲しいの》(1968)などの小説を発表しているが,初期の一見反因襲的な面は徐々に減って,紋切型の〈反因襲〉への揶揄(やゆ)など,健康な伝統主義者の面が強まっている。…
※「《ラッキー・ジム》」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」