世界大百科事典(旧版)内のわさびおろしの言及
【おろし(下し∥卸し)】より
…おろしは古くから行われていたと思われるが,文献上に見られるのは室町後期の《庖丁聞書》あたりからである。おろしをつくる器具は《日葡辞書》に〈Daicon voroxi〉というのが見えるが,ほかではおおむね,わさびおろしと呼ばれている。山東京伝の《近世奇跡考》と斎藤月岑(げつしん)の《江戸名所図会》は,青砥藤綱(あおとふじつな)が使用したと伝えられていたものを〈古代山葵擦(わさびおろし)〉として紹介しており,これがおろし金以前の器具かと思われる。…
【ワサビ(山葵)】より
…室町末期ころになるとワサビ酢が刺身に使われているが,この場合のワサビが刻んだものであったか,すりおろしたものであったかはいずれとも確言しがたい。ただし,おそらくすりおろしたものだったろうと思われるのは,すでに〈わさびおろし〉なる器具があったこと,天正年間(1573‐92)には金属製ではないにしても陶磁製のそれがあったらしいこと,そして,1712年(正徳2)の《和漢三才図会》には今のものとまったく同じ銅製おろし金について明確な記述がなされているためである。とにかく,ワサビはおろすことによって初めてその持味を完全に発揮するようになり,日本料理のすぐれた味覚の形成に大きく寄与したのであった。…
※「わさびおろし」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」