世界大百科事典(旧版)内のオンファロスの言及
【石】より
…古代の小アジアでも,フリュギアの大女神キュベレは,黒石を神体としていたが,その石が第2次ポエニ戦争の最中の前204年に,はるばるローマまでもたらされ,ハンニバルの猛攻から国を救った女神として,古代ローマ人の崇拝を受けることになった。古代ギリシアのデルフォイのアポロン神殿の奥殿には,そこが世界の中心であることを示すため,大地ガイアのへそオンファロスOmphalosをかたどった聖石が安置されていたが,このオンファロスに似た世界の中心を表す石の崇拝は,ケルト人のあいだでも盛んだったことが,フランスの諸処に残る習俗などから,確かめられている。聖石の崇拝は,日本においても縄文時代にすでに,明らかに男根をかたどった〈石棒〉の祭祀などの形で,行われていたことが確実と思われる。…
【地霊】より
…怪物ピュトンを矢で射殺すアポロンの神話,竜を殺すゲオルギウスの伝説,また八岐大蛇(やまたのおろち)を退治する素戔嗚尊(すさのおのみこと)の物語などは多少ともこのような事情を反映していると思われる。そして殺害された怪物を押さえる目的で置かれる石はしばしば〈世界のへそ=中心〉と呼ばれ,デルフォイにはピュトンを押さえつけているという石オンファロスOmphalos(〈へそ〉の意)がある。このほか,中国では竜,日本では蛇やナマズあるいはムカデなどが地霊的なものとして表現されることがある。…
【ピュトン】より
…アポロンはその罪滅ぼしに,葬礼競技ピュティア祭の開催を定め,新たに開いたみずからの神託所の巫女にはピュティアPythiaの名を与えた。彼はまたピュトンの遺骸を,デルフォイのアポロン神殿の聖石オンファロスOmpharos(〈へそ〉の意で,同地が世界の中心たることを示す)の下に葬ったという。【水谷 智洋】。…
【臍】より
…このように自分たちの住む土地のどこかに中心を見いだしてこれを肉体の中心であるへそに対応させる考えは,古代の人々にあまねくみられた。ギリシアのパルナッソス山にあるデルフォイのアポロン神殿には臍石(オンファロス)がある。ギリシア語のオンファロスomphalosにも中心とへその両義があるが,デルフォイのオンファロスが大地の中心であると思われていた。…
※「オンファロス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」