ジラール,R.(読み)じらーる

世界大百科事典(旧版)内のジラール,R.の言及

【演劇】より

…この考えは宗教史的には正当化されないが,一つの比喩としては有効であり,事実,悲劇に限らず演劇の主人公を〈供犠〉すなわち犠牲の儀礼の対象と見なすことは可能だからである。たとえばフランスの神話学者ルネ・ジラールRené Girard(1923‐ )のように,〈贖罪の牡山羊〉をはじめとする供犠に,社会の無意識の層に集積する暴力の発露とその調整を見る論者もいるし(この点ではアリストテレスの〈カタルシス〉論に通じる),あるいはフランスの古典神話学者ベルナンJean‐Pierre Vernant(1914‐ )のように,この〈穢れ〉を具体的な儀礼と結びつけて,たとえばソフォクレスの《オイディプス王》を,アテナイの古い宗教的習慣である〈汚穢を担う者(パルマコス)〉の追放と,同時代の政治的選択である〈貝殻追放〉とを重ねて読んだものとし,犠牲に選ばれる者の両義性すなわち人並み優れていると同時にすべての人より卑しく穢れている者という様相を強調する学者もいる。その〈穢れ〉がいずれにせよ人間の社会を成立させるために必要な排除の原則によって人間以外の領分に排除された〈反‐世界〉であってみれば,ソ連の文芸学者M.M.バフチンのように,始原的混沌の侵入による社会的生の活性化であるカーニバル道化に,演劇の真の作用を見いだそうとする視点も生まれてくるのである。…

【精神分析】より

… 一方,J.P.サルトルやM.メルロー・ポンティをはじめ現象学とマルクス主義を結合する実存主義の展開に続いて,人間の社会的活動を深層の意味構造から理解しようとする探求が生まれると,精神分析とフロイト主義は,言語学や人類学などと連動しつつ,無意識的な文化の構造を探り,人間認識の基本視座を革新する試みの思想的源泉の一つとなった。C.レビ・ストロース,M.フーコーらがそのような試みの代表者であるが,その後も思想のあらゆる分野でフロイトの新しい理解が新しい探求を触発しており,精神分析学者F.ガタリと共同する哲学者G.ドゥルーズの社会哲学的探求からJ.クリステバの記号論的探求やR.ジラールの象徴論的探求などにいたるまで,フロイトと精神分析の影響はいっそう深くひろがっている。心理学精神医学【荒川 幾男】。…

※「ジラール,R.」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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