デリュック,L.(読み)でりゅっく

世界大百科事典(旧版)内のデリュック,L.の言及

【アバンギャルド】より

… 何よりも既成の商業主義映画の属性,とくにストーリー性とリアリズムを排除すること,そして純粋に映像のもつ芸術的表現の要素を追求することが,アバンギャルドの精神であった。ルイ・デリュック(1890‐1924)によれば,それは〈余計なイメージもなく,セットもなく,無用の人物あるいはシーンもない単純な美しい線のなかに,ただ映画にのみあたえられ,奉仕しそして表現する能力のあるあらゆる手段によって,感情や感覚を映像化する映画〉である。こうしてダダイストの詩人で画家でもあるフランシス・ピヤビアの脚本によるルネ・クレール監督の《幕間》(1924)をはじめ,F.レジェの《バレエ・メカニック》(1924),M.デュシャンの《アネミック・シネマ》(1925),《アブストラクト》(1927),ブラジル生れの美術家アルベルト・カバルカンティ(1897‐1981)の《時のほか何物もなし》(1926),マン・レイの《エマク・バキア》(1927),《ひとで》(1928),A.アルトーのシナリオによるジェルメーヌ・デュラック監督の《貝殻と僧侶》(1928),ブニュエルとダリの《アンダルシアの犬》(1929),ジャン・ビゴの《ニースについて》(1929)等々,きわめて意欲的・革新的な短編が,次々とつくられた。…

【シネクラブ】より

…映画史上の名作や通常の興行に乗らなかった特殊な作品(実験映画など)の上映会およびそれに伴う講演,討論会を定期的に開催し,映画に対する大衆(会員)の芸術的認識や理解を深めることを目的とする自主機関。1920年,フランスの映画批評家ルイ・デリュックによる次のようなマニフェストとともにこの言葉と組織が生まれた。〈ツーリストクラブがあるように,シネクラブもまた必要である……ここに私たちは《シネクラブ新聞》を発刊し,若者たちの熱烈な要望にこたえ,フランス映画界の発展に寄与するすべての試みに全力を尽くすことにする〉。…

【フォトジェニー】より

…写真うつりがいいことを意味するフランス語で,〈フォトジェニックphotogénique(写真うつりがいい)〉という形容詞も一般的に使われるが,映画用語としてはカメラうつりがいい俳優(とくに女優)の美しさを意味するとともに,サイレント時代の映画美学としての映面史的な意味をもつ。 かつて世界の市場を支配したフランス映画が,第1次世界大戦を機にハリウッド映画に圧倒されていた当時,フランスのもっとも先駆的な映画人の1人であったルイ・デリュックLouis Delluc(1890‐1924)は,映画の本質を〈フォトジェニー〉ということばであらわし,《フォトジェニー》(1920)と題する著書も出した。〈フォトジェニー〉は定義しがたい〈魔法のことば〉といわれたが,デリュックを師と仰いだ監督・理論家のジャン・エプスタンは,《エトナ山上の映画論》(1926)のなかで,〈絵画にとっての色彩,あるいは彫刻にとってのボリューム,すなわちその芸術の固有の要素〉とフォトジェニーを定義し,また映画批評家・理論家レオン・ムーシナックLéon Moussinac(1890‐1964)は,フォトジェニーの本質を〈視覚的リズム〉と定義した。…

※「デリュック,L.」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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